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2007年1月26日 (金)

授業 Human Side of Leading Technology (Vol.2)

20070125_1_1 以前書いた記事の前振りが気になる!というメールをもらったので授業での話を簡単に説明しよう。

例1)P&Gという日本でもおなじみの会社がアメリカ本国で発売している有名なマウスウォッシュ、最初はミントの緑色だけだった。2色目、スペアミントの青色が開発されてから実際に発売を決定するまでに10年かかった。

P&Gはマウスウォッシュの分野で既にトップの地位を築いていた。市場がある程度成熟したときに行う常套手段は細分化だ。(最近のスキー業界と言えばわかるだろうか)しかしP&Gは恐れた。トップの地位を築いたマウスウォッシュは緑色、人々はこれを欲しがっているし買っている。そこに青色のスペアミントを発売することで消費者を混乱させ、その他大勢の企業が出しているマウスウォッシュと同じように見られないかと。現状維持がブランド力維持だと信じたのだ。もちろんこの不安は杞憂に終わった。

例2)1950年当時、時計と言えばダントツでスイスだった。今でも技術は世界トップだが販売個数は日本にとっくに抜かれ、雇用者数は40%に、企業の数は当時の30%にまで減ってしまっている。


スイス人にとっての時計とは宝石と同じであり財産だ。時計とは親から子へ、そして孫へ受け継ぐものである。普通は一生に1個買えるかどうかの物なのだ。精巧に作られた機械式の時計は美しく芸術品の域に達している。手入れをしつつ使い続ける物であって、決して壊れたら捨てて買い換えればいいやと言うがらくたではない。
なので日本企業が安い時計を売り出したときにスイス人は「クォーツ?日本製?あんな物は時計ではない」と言い続けた。しかし結果的に世界中には安くて品質の高い日本製のクォーツがあふれかえり、スイスはシェアを圧倒的に失った。
しかしスイスはマーケットを高級機械時計に絞ることで強みを発揮して生き残り、その地位を揺るぎないものにしているし、少し前からは低価格分野でもSWATCHという独特のブランドで巻き返しているのは皆さんご存じだろう。
余談だけれど、1950年代には車業界でも日本車に対してアメリカが同じ反応をしたが、こちらは今のところアメリカは全面的に形勢が悪いようだ。

例3)1950年代、技術の花形は真空管だった。当時の真空管メーカは高い技術開発力を有していたにもかかわらず、トップ10社のうち1975年には2社しか生き残ることができなかった。

この問題は一面的に分析できないので非常に難しい。しかし要因としては技術革新への遅れが大きいだろう。成功している企業ほどその技術を過去の物にする新しい物を売り出すのをためらう。その変化のリスクを恐れるあまり、ライバル会社や新興会社の新しい技術に容易に市場を乗っ取られるという結果を生む。授業で最近(と言っても古いけど)の例として挙げられるのはコンピュータで世界を席巻したDECのアルファチップの開発の話だ。詳細は割愛するけれども、DECを破滅に追い込んだこの話は以前紹介したProf. Katzの著書に詳しい。
もちろんその他にも、自分たちの強みとすべき分野を見失って多角化しすぎた結果として破滅する企業も多い。DECを買収したCompaqがその例だろう。CompaqがDECを買収したときにIBMのCEOは大喜びしたという話はIBMを立て直した話「巨像も踊る」に理由を見て取れる。

というわけで、この授業は教授がものすごい早口であることを除いて非常に面白い。
授業の流れとしては

  • イノベーションとはなにか
  • 集団において、失敗を招きがちな振る舞いとその心理
  • イノベーションにおける集団と個人の関係
  • 技術職と管理職がチームとしてどう行動するべきか
  • チームでの意志決定のプロセスで何に気をつけるべきか

と、ホントはこんなに単純じゃないけれどもだいたいこういう感じで進んで来た(授業の内容は追って報告します)。

どうでもいいけど、彼は日本(おそらくは企業)で授業をした経験が多いようで、文化の違いの例や企業の成功例に日本を多用するのでクラスメートに名前と国籍を覚えてもらうのにかなりかってもらっている。授業の後に「教授が学生を当てて意見を求めるのが何でおかしいの?」「名刺ってそんなに大事なの?」なんて聞かれる事も度々なのだ。

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コメント

>AerospaceMBAさん
コメントありがとうございます。
ほんとに勝ち続けるための経営って、近視眼的に見ると不可解な行動に見られることもあるのが、なんとなくわかってきました。
クラスメートと話していて意外に思ったのは、日本人は革新的な技術とか商品を出すことに優れていると思われていることですね。その点でマークされている事は間違いないです。「労働者の平均能力が優れていることと、客の立場と論理で考えるからだよ」とは言えなかったですけど。

いい授業ですね!そんな先生から学べる環境にいられることがうらやましい。
「勝つための戦略」と「勝ち続けるための戦略」がいかに似て非なるものか、この違いをしっかり認識できる者だけが本物の経営者だと僕は思います。

しかし、自動車や時計の例からみても分かるように、今後日本人がとるアクションはすべて徹底的にマークされるのでしょうね。MBAの経営戦略の教授も、一番にベンチマークすべき存在として、日本の企業を挙げていました。逆に考えれば、マークをはずしてゴールを決めるだけの力量が我々日本人には求められるということですよね。頑張りましょう!

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