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2007年1月20日 (土)

SEの普及とアメリカのジレンマ

久々にSEについて語ろう。
先日もちょっと触れたけれども、日本でSEを体系的に教えている大学は聞いたことがないし、博士号も取れる分野ではない。SEと呼ばれる人たちがたくさんいるソフトウェア分野においてもだ。何しろ機械学会や情報処理学会などのメジャーな学会でもSEという分野が無くて論文の投稿さえできない状況なのだ。
最近は多少認知されつつあるのと、熱心な人々の努力によって小さいシンポジウムなどでSEのセッションが持たれ始めSEについての論文が出始めているところだし、有志の人たちが推進団体の設立と普及に向けて頑張っている。

一方で世界を見渡すとSEが一番普及しているのはアメリカであり、ヨーロッパ、オーストラリアが続く。さらには21世紀を迎えてからは韓国、中国、台湾、インド、シンガポールなどが急速にSEの教育と導入を国策として図っている。来年の3月にはシンガポールでSEのシンポジウムが開催されるし、彼らは世界最大のSE推進団体INCOSEのシンポジウムを初めてアジアで開こうと頑張っている。
残念ながらアメリカと軍事&宇宙で張り合うロシアについては全くの謎である。
念のために付け加えておくと、SEの普及度が技術力や産業の成熟度と直接比例しているわけではない。SEだけで語れる問題ではない。
例えば一番普及していると言ったアメリカでも、NPOESSと呼ばれる次期地球観測システムはコストが2倍以上に膨れあがる見込みだし、先日ボストンでは地下鉄で導入したICカードシステムが-13度というボストンでは珍しくない気温で低温障害を起こしてダウンしてしまった。地下鉄自身も建設費が予定の2倍以上になっている。有名なところでは、昨年ニューヨークで大規模な停電が起こったのを覚えている人も多いだろう。アメリカでも巨大システムが抱える問題は山積なのだ。

さて、世界一と言ったアメリカでは数多くの大学でSEを学ぶことができる。MIT,Stanford, Caltech, Carnegie Melon, USC, Geogia Tech・・・・挙げきることは到底不可能なほどだ。そしてアメリカでは毎年8,000人もの学生がSEの工学修士号や工学博士号を取得して社会に出て行くのだ。

しかし、アメリカでは今慢性的にシステムエンジニアが不足しているらしい。

その大きな理由は二つあるようだ
一つはアメリカの大学でSEを学ぶ人たちの大半がアメリカの市民権を持たない人々であること。
もう一つは多くのシステムエンジニアを必要とする産業が、航空宇宙、軍事、セキュリティ、インフラ、その他アメリカの基幹を支える分野であり、そこで職を得るためには市民権を持っていることが求められているということ。
軍事産業で働いているクラスメートの1人はSEの修士号を持っているけれども、一緒に卒業した30人の仲間の中で、アメリカの市民権を持つのは自分1人だったらしい。

こうしてアメリカの大学がSEの最先端として認められれば認められるほど世界中から学生が押し寄せ、大学も多様性と影響力の拡大を歓迎してか、どんどん受け入れる。その結果アメリカはシステムエンジニアの最大の供給元でありながら、システムエンジニアが不足していくと言う不思議な状況に陥っているのは皮肉なものである。

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コメント

>s130さん
コメントありがとうございます。
そうですね。確かに土地によってそういう違いはあるかと思います。
特に航空宇宙産業で働こうと思うと永住権が無いと難しいでしょうね。

テキサス州ダラスの私立大で SE の修士課程に居ります.
ダラスは周りに軍需の大企業の拠点が幾つもあるせいか,生徒も半分は米国人のそれらの従業員です (ちなみに他は新都市建設のため国策で来てるサウジアラビアンが多い).
また,典型的な Job market も立地のせいでそれら近隣の軍需企業が多く,外国人お断りのポストが殆どです.
というわけで MIT とはかなり事情が異なる所もあります,という一例のご紹介まで.

>gakiさん
コメントありがとうございます。
確かにそう言う感覚かもしれませんね。国旗はそのIconじゃないかと思います。昔は駄作だと思っていた映画フォレスト・ガンプは、まさにこの感覚を表現したかったのかと感じるようになってからは好きになりました。アメリカン・ビューティはそれを影の面から描いた秀作だと思います。お勧めです。

しかし個の確立ありきから始まるアメリカ人の論理と滅私奉公の精神は折り合うところがあるのか疑問です(^_^;)


その感覚って、日本で昨年あたりよく話題に上った「祖国愛」「郷土愛」って感覚に近いとても一般的な感覚かもしれませんね。

ただ、愛情の表現方法は各国民それぞれで、アメリカ人が国旗を立てたがる(しかもでっかいやつ)のを、カナダ人はよくジョークにしています。

それにしてもケネディの言葉は僕は誤解していたかな。僕は、権利ばかりを主張するのではなく、日本の侍のように「滅私奉公することを学ばねばならんぞ」というエッセンスが入っているのかと思ってました。

>AerospaceMBAさん
国を背負っていく気でいるアメリカ人は、ここではホントにごく少数です。
アメリカ人にとっての愛すべきアメリカは歴史、風土、文化、土地、人々などをごっちゃにして個々に分けられない何か指しているみたいですね。政府はむしろそれを駄目にしていると感じているようで。
僕も教師は嫌いでも学校は好きというタイプでしたから何となくわかるような気がします(笑)
とはいえ、全体的には僕にはフランス人よりもわかりにくい人たちですね。

そうか、MITは私立大学なんだよね。そうだった。当然と言えば当然なのかな。
アメリカNo.1のMIT、世界のMITだからこそ、天下国家を語るような人材が集まっているのかと思っていたけど、やはりアメリカはアメリカなのか。
ケネディ大統領が"My fellow Americans, ask not what your country can do for you"とか言っちゃった影響が今でも残っているのかな。本当に国をあてにしない国民性だよね。そのくせ、自分の国が大好きなんだよね。
よく分からん、アメリカ人。フランス人もよく分かんないけど。

>AerospaceMBAさん
コメントありがとうございます。
医学部の例えはまさにそのとおりですね。
でも私立大学のモチベーションは、国の要求を満たすことよりも大学の価値を高める事にかなりの重点が置かれている気がします。
僕が感じたアメリカ人クラスメートの平均的な感覚としては「どうせ国は何もしてくれないし」という意識が日本人の僕よりも驚くほど高かったですね。

うん、なんか矛盾しているね。
要求事項を徹底的に明確にしてからGoを決定するのがSEの基本の一つだとすると、アメリカという国家が要求するSEの数を満たしていないという事実は、まさにシステムとしてのSE教育がSEの基本を忘れている可能性があるよね。
大学医学部のある町なのに町医者として働く者が実際には不足している、そんな印象を持ってしまいました。

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