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2007年4月 2日 (月)

Space Launch Systems Guide

20070402_1 とある授業でグループワークをしているクラスメートから”俺のバイブルだ!”と紹介されたのがこの本、International Reference Guide to Space Launch Systems -Fourth Edition-

情報提供者リストの中にJAXAからも7名が記されている事もあってか、日本でもロケット関係者の中では有名な本らしいけれども全く知らなかったのは不覚。

というのも、世界の打上システムとサービスを網羅的に知るには非常によい本だという印象を受けたからだ。
ロケットのリストだけを見てもメジャーどころはもちろん潜水艦から打つShtilから開発中のK-1やVegaまで含まれているし、ブラジル、インド、イスラエルといった比較的マイナーな国のロケットもばっちり網羅している。

実は恥ずかしながら本当に驚いたのは各ロケットの解説内容だ。
もちろん各ロケットの構成、エンジン性能、バリエーション、性能曲線(衛星質量と投入軌道&高度など)、フェアリング形状とアダプタ(衛星が搭載できる空間と取り付け方法と言えばいいかな?)、衛星への要求条件などに注力されているのだけれども、それ以外の情報が日本語のロケット解説書と比べてかなり充実している。
日本のロケットではM-VとH-2Aが掲載されているのだけれども、例えばH-2Aについては年間に打ち上げられる回数や漁業問題による打上期間の制限、ロケットがどこで誰によって製造され種子島で打ち上げられるか、射点や運用がどうなっているかが概説されている。さらには、源流のN-1まで遡って開発と性能向上の歴史、打上履歴、失敗とその原因が概説されていて面白い。

そして、一番初めのロケット概要には、主要な組織としてこう書かれている。
Marketing Organization:           Rocket System Corporation/Mitsubishi Heavy Industries
Launch Service Organization:   JAXA/Mitsubishi Heavy Industries
Prime Contractor:                  Rocket System Corporation/Mitsubishi Heavy Industries

RSCとMHIがセールスやっているのは知っていたけれども、どこまでマーケティングはやっているのかちょっと気になる。
今日の「民営H2A打ち上げ、1回ごとに国費要請…三菱重工」というニュースで、

・・・H2Aの打ち上げ事業は02年、国から三菱重工に移管する方針が決まり、1日にスタートした今年度から正式に移管された。三菱重工は民間受注を目指して営業活動を展開してきたが、外国のロケットより割高な打ち上げ価格がハンデで、受注実績はない。・・・

・・・「産業支援にあたるため、宇宙機構の予算で計上するのは難しい。H2Aは打ち上げ精度などを高めれば、今の価格でも外国勢に対抗できるはず」(文科省)など慎重論もあり・・・
(出典:Yomiuri Online)

とあったけれども、この本で他のロケットの情報を読むと、本当にロケットの値段と性能の問題かなと疑問になってくる。信用性はともかく公開情報源を参照すると打上費用は、H2A202:$80M、Ariane5G:$180M、Delta4 Mid.:$90M、とデュアルロンチがほぼ前提とも言えるAriane5Gの値段は半分としても、そんなにひどい値段じゃ無いと思うのは気のせいだろうか。性能についてはむしろH-2Aが多くの点で勝っているんじゃないかと思う。

気にすべきは契約手続きから衛星打ち上げまでの商用サービスがどうなっているかだと思う。その点が諸外国と肩を並べられる位にならなければ、いくら打上費用を国が補填したところで商用打上の契約は取れないと思うのだけれどもどうなんだろうか。

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コメント

>510さん
詳細ありがとう。勉強になります。
僕の意見がサービスに偏ってしまったけれど、510さんの意見にも有るように、射場の制約とかそれこそ色々あるわけです。その中でどうやってH-2Aを使った打上システムを売っていくか、どこを変えて価値を上げていくかですね。
射場のせいならそれこそクリスマス島にでも作ればいいと思う。
キックステージを付けるなりするべきだと思う。
本当に商売するならロケットだけじゃなくて衛星打ち上げ全体のコストと性能を最適化すべきですね。

ちょっと話がそれたけれども、この場で問いたいことを端的に言うと「打上市場におけるH-2Aの価値って何?」って事です。

言い換えると、
・衛星を打ち上げたい客が重要視しているのは何?
・他のロケットじゃなくてH-2Aを選ぶ理由は何?

それが広く認知されない限り、民営化してH-2Aで儲けていくのはとても難しいと思うし、それを忘れずに進まないと将来にツケが回ってきそうな気がするな。

長文失礼します。

僕の意見では、打ち上げ契約を取れない主原因はロケットの価格でも信頼性でもなくて、種子島打ち上げによる軌道傾斜角度の不利でしょう。

最近、商業静止衛星打ち上げ用ロケット市場で活躍しているのは、アリアン5、シーロンチ(このあいだ失敗したけれども)、プロトンの3つ。

アリアンとシーロンチは赤道直下から打ち上げるので、静止トランスファー→静止への軌道変換で衛星に要求されるアポジ推進増速量は1.5km/sec弱。

それに対し、北緯30度から打ち上げるH-IIAの場合、静止軌道に入るために衛星に要求されるのは1.8km/sec強。20%以上多めの推進剤が必要になってしまう。

ご存じのとおり、商業静止衛星は全てバス化されていて、全体構造とその中に占めるアポジ推進剤タンクの大きさは全てアリアンを前提に設計されている。
ので、H-IIAでは打ち上げられないか、もしくはミッションペイロード重量を大幅に削減しなくてはならないわけ。それでは使ってもらえるわけがない。

プロトンはバイコヌール(北緯50度)から打ち上げだが、第4段の複数回着火で軌道傾斜角とペリジ高度を修正して、アリアン/シーロンチより低い増速量にしてあげてから衛星を分離している。

H-IIAが商業静止衛星を受注するには、
1:ペイロード重量が削られても衛星メーカが使いたいと思うほど劇的に安い値段(例;一発30億)
もしくは
2:ロケット能力向上による、アポジΔV軽減サービス
のどちらかを実現しないと難しいでしょうな。
<PS>
この分析はク○スには伝え済みです。

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