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2007年5月30日 (水)

NBA Draft

20070530_1 バスケットボールが趣味で高校生の頃からNBAを衛星放送でよく見ていた。今シーズンは週一回ニュースでチェックする程度でしかなかったけれど、休みに入ってからはプレイオフが大詰めに向かっている上に好きなチーム、サンアントニオ・スパーズが勝ち進んでいるので、ちょくちょくテレビで観戦している。

ボストンは昨年末にはもうプレーオフに期待することなど全くないくらいに弱かったけど、ボストンファンが今の時期に一番期待していた事は先週行われた新人ドラフトだ。だいたいどの年も、大物新人が1,2人いる。その選手を獲得できるかどうかで後の数シーズンの成績が如実に変わってくるのだ。
実際に僕の好きなSPURSもスター選手のけがで惨憺たる成績の翌年、97年に大物新人を1巡目1位で獲得した。そしてその次の年に優勝し、その後も2回優勝している。チーム史上、優勝歴はその3回だけ。どのチームがその選手を獲得するかはとても重要かわかってもらえるだろうか。

そのドラフトは1チームずつ順に選手を指名して入団交渉権を確保していくおなじみのシステムだけれど、その選択順位の決め方が非常に合理的かつユニークなのだ。

Wikipediaにも詳細が紹介されているが簡単に説明すると、基本的に指名権の順番は例外なく成績の悪かった順に与えられる。ただし手を抜いて良い選手を取ろうという事態を防ぐために、1巡目の最初の3人はくじで決められることになっている。
リーグ全体でプレーオフに参加できなかった14チームに勝敗に応じて、順位選択権の確率が割り振られる。今年は公式サイトにあるように、成績が一番悪かったメンフィスには25.0%、2番目のボストンは19.9%と続いて14位のロサンゼルスには5.0%と割り振られる。そしてコンピュータによる抽選で最初に選択権を得られる3チームが決められる。4番目以降は勝率の逆順に割り振られ、勝率1位のミネソタは30番目にようやく選択権が回ってくる。

いかにしてリーグ全体でチーム力が拮抗して面白い試合が増えるかにNBAは努力しているように見える。新しいチーム設立の時にも各チーム登録12人のうち、確保できるのは2名のみで、残りの10人は新設チームに引っ張られても文句が言えないというかなり厳しいルールになっている。

それでもプロスポーツ運営のためのシステムとしてはとても良いシステムなのではないだろうか。僕が日本のスポーツよりもNBAを好きなのはここら辺にもあるかもしれない。

さて、今年のドラフトの結果に戻ると、なんと5.7%の確率しか有していなかったポートランドが1位を射止めたのだ。残念ながらボストンは2位、3位のくじにももれ、4位になってしまった。来シーズン華々しくデビューする期待の大型新人で会場は大盛り上がり、と言うことに少しは胸をふくらませていた僕も少し残念だ。
ただし、あのマイケル・ジョーダンでさえドラフト2位指名だったことは有名だし、今年のシーズンMVPは9位指名。どういう予想外が起こるか楽しみでもある。

Value Capture

20070529_1 何らかの技術や商品、サービスによってビジネスエコシステムが形成されたときに、どうやってその価値を利用して自分たちが儲けるか、メリットを享受するかが重要になってくる。
つまり、SONYが開発した電子ブックによって、電子ブックのマーケットができあがったときに、どうすれば皆が電子ブックに高いお金を払って、しかもSONY製品を買ってくれるかを考えなければならない。さらにはどうやって自分たちがビジネスエコシステムをコントロールして利益を誘導するかも重要だ。

他社との価格競争によって利益がどんどん圧迫されてしまってはいくら売れても儲からない。他の会社が独自の非公開フォーマットを作って出版者と組んでしまったりしてはライセンス料を払わされる羽目になって、弱い立場に追い込まれるかもしれない。

ただし、他社をけ落とすことしか考えないでビジネスは当然成り立たない。シェアを上げるための争いをしているうちに市場自体が縮んでしまう事も良くある話。競争しながらも協力して市場を広げ、結果的にお互いの収入を伸ばすことが出来ればそれは大きな成功といえる。

2007年5月28日 (月)

Clam Juice

20070527_2 魚を食べたい!と思ったら高級スーパーマーケットでもアジア系スーパーマーケットでもなくケンブリッジに2件あるイタリア系魚屋に行っている。まずアメリカなのに鮮度が良い。そして日本と比べると値段が安い。さらに調理師がタイ、マグロ、ヒラメ、ハマグリ、マキガイ、サシミ、サンマイニオロスなどの日本語を操る他、アメリカ人みたいに魚の皮も剥がないし、ひれも切らずに残してくれるので日本人の客も多いらしい。噂ではマツザカ家も来るとか来ないとか。

そこで見つけたのがこれ。もし冷蔵庫にあったらグビッといっちゃいたくなる危険な感じ。
もちろんイタリア人も飲むんじゃなくてだし汁として料理に入れんだろうけど。

Business Ecosystem

20070527_1 自分の仕事に影響するのが顧客だけと言うことはまずあり得ない。これは民間企業でも政府組織でも、果ては国家でも同じ事。コンポーネントや部品の供給者からシステムを運用してサービスを提供する者まで幅広い階層に分かれている。さらに同じ階層には様々な特徴を持った競争相手がいるし、複数の階層に渡って事業を展開している場合もある。

更に自分のビジネスのコアとなっている技術と競合する技術も考えに入れなければならない。例えば情報通信にも衛星無線、地上ケーブル、地上無線など色々あるし、無線においては数々の通信標準がある。

例えば前回例に出したSonyの電子ブック。E-inkの技術はE-ink社から供与されているし、そのほかの部品やコンポーネントで部品メーカーから供給されるものもあるはずだ。そして製造した電子ブックは量販店やオンラインなどの販売チャネルで売ってもらわなければならない。なにより、出版社と作家からのコンテンツ供給、オンライン販売網の確立。どれを欠いてもうまくいくわけではないし、競合する紙の本、携帯電話、PDA、ウルトラモバイルPCなどとの差異化と競争力維持も非常に重要だ。

こういった競争&協力相手とそれぞれがカバーしているビジネスの階層、さらには異なる技術における同様の関係を総合してビジネスエコシステムと呼ぶ。これは一見当たり前のことのように思えるけれども、全容を漏れなく把握して皆で共通認識を持っておくためには非常に有効な物の見方だと思う。
そして、各社がどういうポジションを取ってどういう競争&強力関係、利害関係にあり、どの分野に進出していこうとしているかというダイナミクスを把握できる勢力地図にも使える。

そしてもっとも有益だと思えるのは、どこで価値が生まれて誰がそれを享受しているか、自分たちがその価値を継続して生み出し、享受するためにはどうすればいいかという事を考えるための基本になると言うことではないだろうか。

2007年5月27日 (日)

Boston 美術館

20070526_1 風邪も治ってないのにと言われそうだけど、体調がだいぶ良くなってきたので、今日は朝からボストン美術館(Boston Museum of Fine Art)へ家族で行ってきた。うちは夫婦で美術館や博物館好きなので日本でも頻繁に出かけていた。
なのにボストンに来て5ヶ月の間全く出かけていなかったし、なにより5月中はバンク・オブ・アメリカの口座を持っていれば$17の入場料が無料なので行かない手はない。妻と娘は始めて、僕は10年ぶりのボストン美術館。

日本だとどうしても品揃えの点から特別展ばかりに行くので土日に行くとすごく混雑しているが、こちらでは常設展が充実しているのであまり混んでいない。観光シーズンでもないので日本の平日くらいの空き具合でゆっくりと見て回ることが出来た。北米、南米、アフリカ、エジプト、ギリシャの古代文明に関する展示が多いけれどもはっきり言ってあまり気に入る物はなかった(大英博物館やルーブルなどと比べるからかも)。むしろ中国美術、チベット仏教、日本美術の質がすばらしい。しかも部屋毎に柱や壁などの内装まで美術品との統一感を出していて楽しかった。常設展ゆえだろう。
残念ながら日本でボストン美術館展をやっている関係上、日本美術は少なかったけれどアジア文化を十分に楽しめた。(10年前も日本美術は展示場が改装中で悔しい思いをした・・・)ただ、枯山水の日本庭園だけは雰囲気をまねただけのもので基本から間違っていてがっかりだった。

20070526_2 娘が目覚めた午後からは、文字通り娘と一緒に近代ヨーロッパの絵画や陶器を見て回った。16世紀頃の宗教画や19~20世紀の印象派、マイセンに代表される陶磁器は娘も気に入ったようで手足をばたばたさせて喜んでいた

アメリカにいて気がつくのは子連れに対する日本との考え方の違い。日本では美術館は静かに鑑賞するものという考え方が一般的なのと、混んでいるせいもあるけれど乳児連れで見るのはなかなか難しい。こちらではベビーカー乗り入れOKだし、周りの人が娘に対して非常に気を遣ってくれる。ちゃんと授乳室まである。

その授乳室で妻と一緒にミルクをあげていると、男の子を抱えたおじさんが入ってきておむつを替え始めた。世間話の最後に「妻が両親を案内しているから、今日この子の面倒を見るのは俺の役なんだよねー。さ、早く行って追いつかなきゃ」と言って手際よく済ませて出て行った。こちらの父親もなかなかやるもんだ。

20070526_3 最後に、今日一番の収穫はこれ。
アメリカ人画家で唯一と言っていい、僕の大好きなキース・ヘリングの幅5mはある巨大な作品。これには感動。

Value Creation

20070525_2 新しい技術や商品が普及するかどうかは斬新さや性能の高さによると考える人も多いけれどもそれは間違いだ。どれだけ斬新でも、どれだけ高性能でも役に立たない物や普及せずに消えていった物は山ほどある。問題はそれがどれだけの価値を誰に提供しているかだ。つまり以下の2点が重要になる。

  • 既存の技術や商品に無い何を誰に提供しているのか
  • その価値を生み出している鍵になるポイントは何なのか

例えばE-inkという技術。電源を切っても表示が消えず、見やすく、極低消費電力の液晶のようなものがある。

SonyはE-inkを使って非常に高解像度でしかもスタイリッシュな電子ブックを開発した。間違いなく世界の最先端を行く軽量でかっこいい電子ブック。しかしビジネスの結果ははっきり言って失敗だった。なぜなら紙の文庫本と比べて出版される本の数は少なく、文庫本より重くかさばった。本質は技術ではなく価値なのだ。

Motorolaは昨年、E-inkを使って、薄くて太陽の下でも画面が見やすく、使用時間の長い携帯電話を開発した。その反面6文字×2行しか表示できない画面で文字のバリエーションも少なくしている。これは日本や欧米のような成熟した市場では売れないだろうけれども、アジアやアフリカ等の新規市場に安価でシンプルな電話として売り込んでいるらしい。すなわち通話機能だけの電話だと割り切ってしまえば、安くて小型軽量で長時間使用できて視認性がいいというメリットがある。これは他の携帯電話と比べても十分に価値を生む可能性を秘めている。

技術の善し悪しだけではなく競合する商品に比べて何が違うのか、どういう人たちにどういった価値を提供しているかのバランスが重要なのだ。

2007年5月26日 (土)

Written Test

20070525_1_2 まだ風邪は治りきらないけれど、昼寝をする毎にましになっているので体力の問題かも。

とはいえ、今日はそんな中自動車免許の筆記試験、Written Testを受けに行ってきた。普段は国際免許証で運転しているけれども帰国前に失効するので休みのうちにアメリカの運転免許を取らなければならないのだ。

細い道が多くて交通量も多いマサチューセッツでの運転免許取得は結構めんどくさい。始めて免許を取る人は日本と同じように教習所に通わなくてはならないらしいけれど、僕は日本の免許+国際免許証を持っているので筆記試験と路上試験だけでOK。ただし路上試験の予約がすぐには取れないようなので今日のうちに筆記試験を済ませたかったのだ。

筆記試験は予約なしで受けられるのだが、僕はこちらで収入がないためSocial Security Number(SSN)という住民基本台帳番号みたいなやつを持たない。なので朝一から、SSN持ってませんという証明書を発行してもらいにSocial Security Admissionに出かける。
9時前に着いたにもかかわらず既に入り口前には「人種のるつぼ」を象徴するように共通性の無い人々が20人ほど列を作っているのであわててパーキングメーターに¢25硬貨を2枚、1時間分放り込んで列に並ぶ。思った以上に早く進んで1時間もかからずに証明書をゲット。

続いて自動車登録局(Registry of Motor Vehicles)までドライブ。ここは普段から良く行くモールの中にある。国際免許証で運転が認められているなら無条件でアメリカの免許証くれてもいいようなもんだけど、それは別の話らしい。ちょっと矛盾を感じながらも快調にドライブしてRMVへ到着。

窓口でパスポートや住所確認書類やらを出して、視力検査と色覚検査、そしていよいよ筆記試験。受験言語を聞かれたので日本語でとお願いする。日本語の過去問をばっちり勉強したので(とはいえ1時間だけ・・・)余裕、と思っていたら、受付のおじさんに「あぁーーーーごめん、試験がコンピュータベースになって日本語ではもう受けられへんねん」と言われて焦る。
「英語でいい?」もちろんスペイン語は理解できないので選びようがない。
「普通は4択やけど、音声付きでTrue/Falseの2択というのもあるけど」と言われたので、それをお願いして受験ブースへ入った。

しかしそれが間違いの元だったようで二択のためかやたらと問題の設定がきわどい。引っかけっぽいのも多くて間違いを連発。スピード違反の罰金最低額が$50かどうかなんて知らなくてもいいと思うのは僕だけだろうか?
とはいえ何とか基準ぎりぎりで冷や汗ものの合格。

無事にLearner's Permitと呼ばれる仮免許をもらって、路上試験の予約を電話。が、これまた自動音声のみで完了するはずの予約が出来なくて、オペレーター呼び出しを延々待たされて結局ギブアップ。月曜の朝にかけ直すことに。路上試験もどうなることやら、無事にこの休み中に免許が取れるのだろうか。

2007年5月25日 (金)

Tylenol

20070524_1 風邪をひいた。

春学期が終わって疲れが出たのか、単に例年通り季節の変わり目だからなのかはわからないけど軽く風邪をひいた。一度治りかけたと思ったら妻に移って、妻が治りかけたと思ったらまた自分が風邪をひいた。移る毎に症状が違うので、移したのではなくて個別にどこかからもらってきたのかもしれないけれども、今の風邪が一番ひどいしまた妻に移ってもいけないので以前医者から勧められた風邪薬を買いに薬局へ。

薬局の風邪薬コーナーに行って驚いた。Tylenolを買えばいいと言われていたのだがなんと軽く10種類以上ある。朝用、夜用、朝夜用詰め合わせ、有効成分増強、8時間有効、鼻炎用、頭痛用、子供用、睡眠誘導用、水無し用・・・・・、ごく普通の風邪用を探すのにかなり手間取ってしまった。

マーケットが成熟したら細分化、ブランド力を駆使してごく近い分野に展開する。マーケティングの典型例を見た気がした。

そして値段も安い。日本の風邪薬の半額くらい?じゃないだろうか。でも安いからといってお世話になりたくはないので早くなおします。写真はTlyenol全ラインアップ。全て風邪薬だが異なる効能がプラスされている。

2007年5月24日 (木)

First Mover Advantage

20070523_1 新しいジャンルの商品を開発して、他社が類似品を送り込む前に自社製品を普及させることで市場で優位なポジションを取れるメリットをファースト・ムーバー・アドバンテージと呼ぶ。SONYのウォークマン、オンライン決済のeBay、オンライン販売のAmazonなどはその類だろう。

しかし、最初に市場に登場した商品や企業が必ず良い結果を残しているかというと、そうでないことは明かだ。市場に出すタイミングが早すぎて消費者に理解されなかったり、後から参入してきた大企業が生産力と流通力に物を言わせて多様なマーケットセグメントに合わせたバリエーションを展開したり、他の商品と組み合わせて非常に安価に提供したりで、あっという間にシェアを失ってしまう事もある。もちろん単純に改良されたり、付加価値をつけた商品の登場によって魅力を失ってしまう場合も多い。

どうやって市場の中で価値を生み出し、それを自分たちで掴むか、これは非常に難しい。
インターネット黎明期のWebブラウザ、Netscapeのように市場を制覇していてもInternetExplorerが無料でWindowsに含まれるようになってからは一気に凋落するものもあれば、逆にRedHat Linuxのように無料でだれでも手に入れる事が出来るものから独自の価値を生み出して利益を得ている企業もある。

「日本企業は新しいコンセプトの商品やサービスを市場に投入する能力に乏しいけれども、新しく出てきた物を改良し、高品質で安価に大量生産して競争力を維持している」とアメリカでは分析されている。それでも'90年頃から商品のライフサイクルが劇的に短くなってきていることや、アメリカを中心として特許の適用範囲が拡大されるに従ってこの日本型ビジネスモデルもうまく働かない場合も多くなってきていると思う。
実際、日本企業もいかにして他社や他の規格に先だって斬新で魅力的な商品を市場に送り込むか、事実上の標準規格の地位を奪うかに、しのぎを削っている。

もし自分が新しい技術を開発した場合、ベンチャーであれ大企業であれ、市場に打って出て成功するためには市場の動向を分析する必要がある。特にベンチャー企業であれば限られたコア技術を持って戦おうとするので非常に重要だ。その指標の1つが今回の図。技術と市場の発展スピードを予測して、自分が戦おうとしているフィールドがどこにマッチするかを分析するものだ。

  • 技術の発展、市場の成長共に緩やかだと見込まれる場合

最近はあまり見かけないジャンルかもしれない。普及に時間がかかるけれど将来的に市場の規模が非常に大きいと見込まれる場合、長期投資が可能な大企業には魅力的な市場だけれど、ベンチャーには概して向かない。

  • 技術の発展は緩やかだが、市場の発展が早いと見込まれる場合

市場にニーズがあるのに製品が出回っていない状態。実際はレアなケースだけれども発明品に近い物が多いと思われる。ベンチャーには一番ねらい所。高いマーケットシェアを取れなくとも十分に利益が見込める。

  • 技術の発展は早いが、市場の成長は緩やかだと見込まれる場合

技術がニーズを生み出していくタイプのジャンルだ。この分野は短期で利益を上げなければならないベンチャーには全く不向きだ。大企業でも上手く新規参入するのは非常に難しい。どちらかというとある程度市場が成長したところで大企業が参入してシェアを奪っていく傾向が強いようで、いかに参入するタイミングを掴むかが成功のキーになるので、積極的に待つ戦略が重要。
近年の例ではデジカメやコンピュータのマイクロプロセッサ、オンライン販売サービスなどが該当する。
非常に強力な技術開発力と資金力がなければやっていけない。

  • 技術の発展も、市場の成長も早いと見込まれる場合

上手く渡っていくのが大変な状況。ただしベンチャーにとっては、ニッチマーケットを中心に小回りをきかせられるチャンスはある。大企業には長期の安定した利益をもたらすのが難しいことから新規参入は難しい。大規模なマーケティング能力、販売チャネル、製造力、そして強力な技術開発力が必要。
PC関連製品やネットワークビジネスがこれに当たる。

いずれにせよ、重要なのはいかにして技術とビジネスの両面で「タイミングを見計らうか」と「スピードについていくか」なのだけれど。

2007年5月23日 (水)

御食い初め

20070522_1 昨日は娘が生まれてからちょうど110日目、ということで御食い初めの儀。
本当は100日目にしようと思っていたけれど、春学期の終わりで非常に忙しかったのと妻が風邪をひいていたので繰り下げたらたまたま110日目になったと言うだけの話。もっとも地方によっては101日目、110日目、120日目と色々あるようだし、献立も千差万別のようなのであまり気にしてはいない。

今回の献立は、赤飯、鯛の塩焼き、蛤の潮汁三つ葉添え、南瓜の煮物、菜の花のおひたし芥子醤油和え。鯛と南瓜は代用品だけど、ボストンでも立派に日本と同じ祝い膳ができあがった。
御食い初めの口上があるらしいけどそれは知らないので、娘が食べ物に困らないよう好き嫌いが無いようになどと適当に祈りの言葉を述べてから、ご飯→汁→ご飯→焼き物を娘の口元へ持って行く動作を3回繰り返して、最後にお箸を小石に当ててから娘の上下歯茎へ、ちょん。これは僕も知らなかったけど石のように丈夫な歯が揃いますようにということらしい(さすが妻)。ちなみに少し苦いだろう鯛の塩焼き以外は娘も味を楽しんでいた。

良く100日も元気に生き延びたな~すごいな~などと、祝い膳を食べながら妻と大げさに話して、自分たちのボストンに来てからの150日を振り返ったのでした。

しかし御食い初めって英語でどうやって説明するんだろ?First Bite・・・とはちょっと違うな。誰か知りませんか?

2007年5月21日 (月)

Dominant Design

20070520_1 先日紹介した技術のSカーブで示した、技術の性能と活動する企業の数は必ずしもあのグラフ通りにマッチするわけではないけれども、企業の数が減少する1つのきっかけとしてDominant Design、つまりその製品やサービスにおける最も優れたデザインの出現がある。

例えば、MP3プレーヤーであればiPod。もちろんiPodはiTunesやiTune Storeも含めて優れているのだけれども、決して先行者でないiPodが市場の多くを握った今、どれだけiPodに似た製品があふれているかは承知の通り。

自動車、携帯電話、ノートPC、ある程度成熟した市場であれば大きなシェアを有している製品同士を比べると、基本構成は同じであることが多い。市場が成熟するまでにかなりの時間がかかっていた頃と違って、そのサイクルが短い最近では一度このDominant Designが出現してしまうと、機能や使い勝手でこれを上回るのは非常に難しく、新規参入の壁が高くなり、競争力を維持できない企業は撤退していく。そして標準化が一気に進むことが多いようだ。

20070520_2 ただしこの理論が当てはまるのは主に大量生産のコンシューマー製品のようだ。僕のチームが授業で取り組んだ「(使い捨て)ロケット」は、1950~70年代に開発された大陸弾道弾や欧米のロケットが基本的な構成を決めてしまい、個々の技術の継続的な向上はあったとしても、マクロな観点ではあまり変化がなく、市場の成熟はそれとは全く関係ない1990年代だろうと結論づけた。スペースシャトルやX-34、Pegasusなどの全く異なるデザインの機体もあるが、いずれも消えていったか生き残っていても市場規模から見ればかなりの少数派だ。
Dominant Designがあまり有効な市場の指標として使えない理由として考えたのは以下の通り。

  • 射場設備や運用も含めた高度かつ複雑なシステムであり、善し悪しが単純に比較できない。
  • 打ち上げサービス購入者の75%が政府であり、価格や性能だけではなく、セキュリティ、信頼性、国益などの力が大きく働く
  • 多額の投資を必要とし、生産数が世界で年間数十基と非常に少ないため、企業数が少なく新規参入障壁が高い

そして最近気運が高まっている宇宙旅行の活動については全く違う市場を切り開く事になるので、使い捨てロケットを衰退させる事も無いと予想している。

使い捨てロケットに取って代わるのは・・・スペースエレベーターか?それとも再び再利用ロケットが姿を現すか?

2007年5月20日 (日)

Hanada Shonen-shi

20070519_1 春休み?に入って2日目、夏学期に向けての準備は月曜からと決め込んで、この休日は娘と共に過ごすことにしている。普段から風呂に入れるのと、タイミングが良かったときにおしめを替える位のことはしているが、昨日は久々に妻に別室で寝てもらって自分が一晩付き添って、今日は夕方から出かける妻の代わりに面倒を見た。

たった2ヶ月のうちにえらい変わるもんで、以前は2時間に1回起きていたのが朝方1回起きただけで後はずっと寝てくれた。長く寝るには体力がいるはずなので成長したのだろう。
ただしやっぱり変わらないこともあって、1日のうち1~2時間くらいは何を言っても泣きわめく。昨日からちょっと喉に痰が絡んだ感じの咳をしていたので気にしていたのだが、医者に連れて行っても隅から隅まで大丈夫と言われるし、今晩も力の限り泣きわめいたので体調が悪い訳ではないみたい。いずれにせよ、親を圧倒するくらいのエネルギーを振りまいているのでいいのだろう。

もちろん娘の面倒を見ている間はたいしたことは出来ないので、日本から持ってきた唯一のDVDシリーズ、『花田少年史』を見る。日本で数年前に深夜放送していたときに気に入って、DVDでアメリカに来るのに合わせて全巻そろえてしまったのだ。確か去年には映画化もされていたはず。

昭和40年頃と思われるほのぼのした田舎を舞台に、事故で幽霊が見えるようになってしまった9歳の典型的な悪ガキが、成仏させて欲しいと頼むいろいろな幽霊を助ける(というか無理矢理に騒動に巻き込まれる)話なのだけど、田舎で育つ純真な悪ガキと過去を引きずる幽霊とのやりとりが妙に泣かせる。

自分が幼少時代に夏休みや正月を過ごした広島の田舎を思い出させると言うこともあるし、山や川を駆け回り、牛の世話をし、おやつは木に登って取った果物という父の話の影響もあるだろうけども、不思議と懐かしい。呼び起こされる感情はリリーフランキーの『東京タワー』と似ているのかもしれない・・・見てないけど。

そして今は花田少年を自分ではなく、力の限り感情表現する娘と重ねて親の立場で見てしまうから自分の変化の大きさにも多少驚いてしまう。

日本ではレンタルも出ているはずなので興味を持った人はぜひどうぞ。

2007年5月19日 (土)

Classes in the Spring Term

20070518_1
参考&自分のメモ代わりに春学期にとった授業リストと感想を。
授業の内容で面白かったことはこの休み期間中にどんどん紹介していく予定なのでお楽しみに。

  • コアコース

ESD.40 Product Design and Development (12単位, 通期)
製品設計からプロトタイプの製造までを通して経験する授業。
マーケティングやニーズ分析、ビジネスプラン、特許調査までやるのでかなりヘビーだけれども新鮮かつおもしろい。単なる工作じゃなくて、ものづくり全体のプロセスにふれることが出来たのは価値有り。担当はDaniel Whitney教授とPat Hale教授

ESD.721 Engineering Risk-Benefit Analysis (9単位, 3/4期)
確率統計によるリスクとメリットの分析方法、サプライチェーンとの関係などについて学ぶ。ベイズ理論や正規分布などを駆使するかなり数学的な授業だけれども、数学モデルは議論の促進や重要なパラメータの認識共有には使えるけれども、実際の確率値を精度良く見積もるのは難しいし、その信頼性の問題もある。なので、それだけを頼りに意志決定をするのは危険で間違ったことということを聞いて腑に落ちた。
担当はこの分野の第一人者らしいGeorge Apostolakis教授。Science of Accademyの会員らしい。期間はSDM用にアレンジされている。

ESD.802 SDM Thesis Seminar (3単位, 通期)
SDMの学生は研究室に所属するわけではなく、勝手にアドバイザーを捜すことになるので頻繁にアドバイザーになってくれている教授陣が交代で研究内容を紹介してくれるコース。研究室に所属するわけでもないSDMの難しいところだけど、逆に何でも出来る自由度はある。

15.840 Marketing in the Innovation Place (6単位, 前期)
開発した技術や技術革新を元に市場に参入するときに行うべきマーケティングについての授業。やはりIT系が多いけれどもエンジニアとしては新鮮な視点が多く、エンジニアもマーケティングはわかっとくべきと思わされた授業。何が商品やサービスの価値を生むのか、どうしたら買ってもらえるのかを考えさせられた。担当は訪問教授Barak Libai氏。

15.905 Technology Strategy for SDM (6単位, 後期)
新技術を持って市場に参入する場合や、大きく成長した後にこれまた新規技術や他の大企業に脅かされる企業がどう行動すべきか、その時点での市場動向や技術動向を分析する授業。Sloanでは全期で提供されているクラスをSDM用に半期で行うので毎回課される読書量が半端じゃない。
担当はMichael Davis氏。肩書きはシニアレクチャラーだが、携帯業界の共通規格を決めるコミッティーのコンサルタントをやっていることもあってIT関係の話題が多い。
単にいい物を作るだけじゃなくて、何が市場で価値を生むか、どうやってその価値を利益に変えるかについて考えさせられる授業だった。

ESD.762 Systems Optimization (6単位, 1/4期)
ふたを開けてみるとエンジニアリングとはあまり関係ない、投資配分と利益の最大化、リスクの最小化の数学的手法を学ぶクラス。
数学を駆使した経済の授業と言ってもいいほどで、ROIがどうとか減価償却がこうとかで、1ヶ月だけだったけれどもかなり濃い。みんな一週間に12時間以上費やした気がする。それでもYield Managementとか、投資リスクと利益の最大化とか、どちらかというとマネージメントやファイナンスについて学んだ気がする。
担当はDavid Simchi-Levi教授

  • 選択コース

ESD.58/15.365 Dsruptv Technology: Prdtor or Prey (9単位, 通期)
技術革新がどうやって起こってくるか。なぜ一世を風靡した企業が簡単に廃れていくのか。マクロ、ミクロの両方の視点から学んだ。そのダイナミクスはなかなか簡単に1つのモデルで表現できるわけではないけれども、1つの分析の仕方を学んだ。担当はJim Utterback教授。

15.980 Organizing for Innovative Product Development (6単位, 後期)
組織におけるコミュニケーションが距離や部屋のレイアウトによってどう促進減退するか、組織形態やヒエラルキー文化などが組織の違いによって何が利点で何が、問題点になるか、などについて学んだ。担当教授のThomas Allen氏の42年に渡る研究はデータの古さはあるもののマネージメントの観点からは学ぶ事が多かった。ただ、補聴器をつけての授業ということもあって学生の声が聞こえづらいのとテンポが緩いのが難点。御年75歳で今期限りで引退。最後の授業で学べたのはラッキーだった。

DAD.001 First Newborn Child Care(24単位相当,通期)
娘の出産から首が据わるまでの子育てを体験。義母のヘルプがなければ最初の一ヶ月は持ちこたえられたかどうかわからないくらいハードだったけど、最近は夜中に起きる回数がかなり減ったのでだいぶ楽になってきた。妻も頑張った甲斐あってか元気にすくすくと成長している。感謝。

2007年5月18日 (金)

Spring term is over!

20070517_1 ここ数日春学期の最終レポートとプレゼンテーションの嵐におそわれていたけれどなんとかそれもやり終えて、春学期の授業が今日で終了。幸い試験がある授業が1つもないので来週の試験期間を含めて夏学期が始まるまで、しばらく学校は休みに入る。他の学科やコースで卒業する人たちは卒業していく。

いやー短いようで長かった。1月は充電完了状態からの短期決戦で乗り切ったけども、4ヶ月間の持久走をフルスピードで走り続ける春学期はヘビーだった。もちろんそれをやり遂げた達成感と成長したという感は僕だけじゃなくて多くのクラスメートが確かに感じている。昨日から「終わった?」「あといくつ?」と言う会話がそこかしこで飛び交っていたし、ほぼ全員が取っているSDM向けの授業が終わるたびにバーに出かけて祝杯を挙げた。

授業を全体的に見てみると、半期、通期合わせて8つの授業、57単位。13ヶ月の学生としては平均的(これ以上取っている人は稀だが)。ちなみに単位数は、授業を含めて一週間で標準的にかかると予測される時間(まず収まらないけど)。分野としてはシステム・エンジニアリングが3割、エンジニアリング・マネージメントが4割、ビジネス(マネージメント、マーケティング)が3割といったところ。

今日昼ご飯を食べた香港出身のクラスメートからは、「最初の頃のチームディスカッションの頃から比べると、だいぶ英語上達したねぇ」「言ってることが聞き取れないとか、意味がわからん、ってことがかなり減ったもん」と言われて嬉しいような悲しいような複雑な気分。

確かにクラスで英語でのコミュニケーションに問題があるメンバーリストなんぞあったら載っかるはずだし、ディスカッションのテンポを落としたり、チームレポートを提出前にみんなでクリーンアップしたら自分のところが重点的に真っ赤になっているのも事実なので、なんとかしなければ。

さて、明日は朝からバスケして、昼はとある授業で組んだチーム4人で解散ランチ。
夏学期が始まるまでの休暇は論文の準備と充電に充てる予定。
もちろん家族との時間が多くとれるのは嬉しいし、既に妻のなかでは行き先リストがある模様。育児を24時間頑張ってくれているのでお互い息抜き出来る貴重な機会なので有効にのんびりしよう。

写真は祝杯を挙げるのによく使うバー。周期メニュー表、らしい・・・

2007年5月15日 (火)

Technology Disruption (S-Curve)

20070515_1_2 多くの技術には世の中に現れてから廃れていくまでにいくつかのフェーズを経る。
それを表すのがこのSカーブだ。もちろんこれは技術だけじゃなくて、サービス、企業競争などを表現するのにも転用できる。


フェーズ1(Fluid Phase)

技術的な成熟度が低く、既に市場にある他の技術と比べても魅力が薄いため売り物にならず取り組んでいる企業の数も少ない。

フェーズ2(Transition Phase)
技術が使いもになり市場に出回るにつれて参入する企業が増加する。その相乗効果でこれまで以上のスピードで改良されていく。市場に製品があふれ、他の技術を駆逐する場合もある。

フェーズ3(Matured Phase)
技術が成熟するとともに成長も鈍化する。企業間競争もけりがついて、数社の勝者が生き残る。それでも新規技術がどこからともなく現れて市場を奪っていき廃れていく。

もちろんこのサイクルが当てはまらない場合も沢山あるけれども、身の回りにも当てはまるものは沢山ある。古くはガス灯と電灯、白熱灯と蛍光灯、カセットテープとCD、WalkmanとiPod、薄型テレビとブラウン管テレビ、VHSとDVD。ハードディスクの5インチと3.5インチ。枚挙にいとまがない。もちろんジェット機とプロペラ機のように異なる市場で共存する場合もある。

そして面白いのは、こういった関係にある、全く異なる2つの技術が同じニーズを満たして市場の勢力図を塗り替えていくときに、多くの企業がその移行に失敗していること。
失敗する理由は色々あるけれども、マーケティングを上手くやっている企業ほど失敗してしまうというのには驚きだ。
なぜなら将来的に市場を乗っ取る側の全く新しい技術は、未成熟で、性能も低く、価格も高い、今の商品を買ってくれている主要マーケットからすると現時点では魅力的でないし購買意欲も湧かない。いかに利益を最大化するかを考えるとビジネスモデルを変えずに現状の技術と商品を繰り返しパワーアップしてシェアの拡大を図る方がはるかに手っ取り早いからだ。ビジネスが順調にいっているときに不確かでしかも規模の小さいニッチ市場に乗り込むメリットを説明するのはなかなか難しい。

と言うことで、今日も栄枯盛衰は繰り返す。
それではどうやってその技術が今の時点でどの段階にあるかを見極めるかというと、確実な方程式は無い。ただ、前述のSカーブを頭に入れた上で参入企業や市場や技術開発の動向を持って予想するしかない。

それでもエンジニアとして、特にマネージメントを必要とする立場であれば、技術と市場のダイナミクスを分析するツールを知っておいて損はないと思う。

2007年5月13日 (日)

SD+M

200705012_1_3 数日前にSDMプログラムのホームページがリニューアルされた。
それに伴ってかどうかわからないけれども、ホームページ上ではプログラムの略称もSD+Mに変わっている。System Design + Management=SD+Mというわけだ。
まさか慶応義塾大学がSDMと言う名の研究科の開講を計画しているから、と言うわけでもないだろうけど・・・・

そして、この2つの事件に対して一部のクラスメートがメーリングリストで議論を始めている。「はっきり言って見にくい、いや醜い!」「プラスって何だ?」「いやいやマネージメントを重要視した結果だ、OKだ!」、「ハーバードよりはかっこいいのを作らんと!」、「こんなwebだとSDMプログラムの価値が損なわれる」、「学校側に再考してもらうように訴えよう」などなど、僕の日本人的?感覚からするとそんなこと学校側に任しとけばいいやん、と思うことも積極的に絡んでいく。

学生がフェローとして運営改善などに関わっているSDMなどの社会人コース特有の話なのかもしれないけれど、普段のコミュニケーションを見ていると、学校運営側や教授陣に対してもアットホームな感じで日本よりもかなりフランクで立場の違いがそこからは見えないくらい。学生といえどもSDMの将来の価値が下がると自分の価値が下がるとも言わんばかりで、自分が属しているコミュニティーは自分たちで作り上げていくという考え方の端くれを見た気がした。それがアメリカという国の若さを象徴しているようにも思える。
もちろん実力主義のアメリカでも実は看板は重要でもあると言う理由もある。

しかし始めて訪れた人にはどうなんだろう、このデザイン・・・・
アートとしては悪くないと思うし慣れれば使いやすいかもしれないけど、
沢山の人に見てもらおうと言うにはちょっとわかりづらいんじゃないかという印象。

ちなみに各ページにちりばめられている写真のいくつかには僕もいる。
疲れている時期だった上に髪の毛伸びきっているのであまり見てくれ良くないけど。

2007年5月12日 (土)

PDD

さむい。

マンションの廊下にせよ学校の教室にせよ、冷房が入り始めているのだが暖房の時の温度設定とどうやら同じらしい。
夏が思いやられる。

とはいえ今日の午後の学校は、それに負けない熱気で盛り上がっていた。
Product Design and Development(製品設計と開発)という授業の最終プレゼンテーションとトレードショーが行われるからだ。
最優秀作品への賞金はなんと$1000!使い道はもちろん自由だ。祝杯を挙げるもよし、さらに開発を進めるもよし。

この授業が面白いのは、単に何かを設計してプロトタイプを作るだけじゃないところ。
マーケットリサーチに始まって、ニーズの明確化、特許対策、競合商品との比較、コスト分析と価格設定、さらにその商品を売って利益を出すためにどういう戦略を取って、どれだけの投資があればどれだけの利益を今後数年で見込めるかというビジネスプランまで立てなければならない。

日本の大学ではこんなコース無いなぁと思っていたら、アメリカ人に聞いても工学の授業でここまでやるのは珍しいらしい。

さて、僕らのチームは温度がわかるコーヒーマグを開発の対象に選んだ。
日本ではあり得ないけれども、アメリカではコーヒーを頼むと信じられない高温(多分90度くらい)で出てくる。香りも味も飛んでしまっているコーヒーが多いのもうなずける。
そんなものだからコーヒー好きのアメリカ人の悩みは、最初の一口でやけどすること、らしい。日本では絶対まずいコーヒーをどうにかする方が選ばれるとおもうけど、ここはアメリカ人モードに頭を切り換えて楽しむことにした。

200705011_1_2 それでできあがったのがこのトラベルマグ。予算の都合もあるしプロトタイプと言うことで見てくれはあまり良くないけども、カップの周りに温度で色が変わる液晶シートや高温で透明になる特殊なインクを塗って高温の場合は赤色が現れるなどしてこれまでにないマグを作り上げた。温度によって虹色に変化するマグカップはなかなか見事で前評判は上々だった。

プレゼンは投資家に扮した教授陣やTA達が、どうやって他社が参入しても利益を出せるのか、なぜその値段で売れるのか、どうしてその製品が魅力的なのかなどをズバズバ質問していく。

 

200705011_2 トレードショーはさながら新製品の展覧会。僕らは缶バッジやポスター、カタログシートなどを配りながらデモをしてアピール、他のチームはビデオや音楽を流したり、おそろいのTシャツでアピールしたりとなかなか楽しかった。

残念ながら賞金は逃したけれども、自分たちの作った物に満足だったし(賞金取ったらみんな1個ずつマグを作る予定だった)何よりビジネスプランも含めた製品設計の大変さを学んだ良い授業だった。

日本の大学でもそろそろ出てきても良さそうな授業だけどなぁ。

無理か・・・?

10-20-30 presentation rule

200705010_1 あつい。

ここ数日の25度を超える陽気に夏が待ちきれないのかキャンパスを歩く人たちの服装がどんどん薄着になっている。
夏になったら何も着ないで歩いている人がいてもおかしくないくらいだ。(おかしいけど)
キャンパスの芝も青さを増し、誘われるように皆芝生の上で思い思いの方法で日光浴を楽しんでいる。

さて、春学期終了間近と言うことでいろんなクラスでプレゼンをしなくてはならない。
ということで、授業の前に一人のティーチングアシスタントがYou Tubeの面白い動画を見せてくれた。
1分程度の短い動画なので簡単な英語がわかる人は是非どうぞ。
(注:Bozoとはアメリカの古いTV番組で有名なピエロの一人です。)

 

ガイ・カワサキなる人物の紹介はWikipediaに任せて話を戻そう。
彼が講演の中で提唱する10-20-30ルールとは次のとおり。
ただし、起業家がベンチャーキャピタルに投資を請うためのプレゼンの話だということに注意。

  • プレゼンは全部で10ページにすべし

投資家はどんな技術を使っているとか、どれだけ性能がアップしたかとか細かいことはどうでもいいのでエッセンスだけを説明すべし。決して1時間のプレゼンでも50ページにしないように。

  • プレゼンの時間は(10ページで)20分にすべし。

1時間もらっていてもWindowsを使っていたら全てセットしてプレゼンを開始するのに40分かかるかもしれない。

  • パワーポイントで使うフォントサイズは最低30ポイントにすべし

30ポイントだと本当に大事な事を短い言葉でしか書けない。
言いたいことを本当に理解していないと出来ないし、大事なプレゼンをするなら自分にそれを強いよう。
16ポイントとか20ポイントだと喋りたいことを長々と書けてしまう。
読み上げるなんてことを始めたら、聴衆はそれより早く黙読できるし、馬鹿らしくてあなたの言っていることに説得力がなくなる。

 

もちろんこれをそのまま言葉通りにどんなプレゼンにも適用するなんてのはあほらしいけども、エッセンスはこういう事だと理解している。

  • 自分が喋りたい事じゃなくて相手が聞きたいことが何かを考えて、それに必要な事を簡潔に話す
  • 質疑応答などお互いに意見交換する時間を十分に持つ
  • プレゼン資料は聴衆に自分の話を聞かせるために使う。

僕のモットーは字数を出来るだけ少なくして絵を多くする事だけど、それと同じで人間は絵を見ながら話を聞くことは出来るけども、話を聞きながら読むことは苦手。
資料を説明するために自分がいるのではなくて、自分がやったこと、思うことを理解してもらうために資料を使うと言う視点は当たり前のようで忘れがちではないだろうか。

ちょっと考えさせられるビデオでした。

2007年5月10日 (木)

Report and Presentation

20080509_1 Technology StrategyというMBAの授業が大詰めを迎えている。
製品開発(ソフトウェアを含む)を行っている企業を対象に、成功するためにはビジネスの状況をどう分析して企業戦略をどう立てていくべきかを考える授業だ。
教授がヨーロッパの通信産業でコンサルか何かの仕事をしていることもあってかハイテク産業を題材にすることが多い。

授業の内容は追って紹介するとして、今は最終レポートとプレゼンテーションの準備に追われている。
課題は特定の技術とその中の一企業に注目し、現状の市場を分析して今後その企業がどういう戦略をとっていくべきかを考えなさいと言うもの。
僕らのチームはBluetoothと言う無線通信標準規格に対応したチップセットのメーカーに着目して分析&戦略を練っている。

レポートは12ページ以下、プレゼンテーションは6分(+質疑4分)と決められている。
それに関して、一通りの講義が終わる今日の授業の最後に教授が語った言葉が面白い。

「自分達がその企業のマネージャーになったつもりで考えてくれ。副社長が僕だとしよう。僕は君たちに、その技術に関して我が社が今後取るべき行動についての分析と報告を頼んでいる。君たちは明日中にその報告をしなくちゃならないけども、レポートが完成したのは前日の夜10時半。おまけに僕は明日一日ずっと会議が入っている。そういう状況で僕がレポートを手にとってプレゼンをさっと聞いて満足出来る物を期待している。言いたいこと、そしてそれをサポートする事実と論拠を簡潔かつ明確に。」

「もう一つ。チームで出来る限り沢山の情報を集めてレポートに漏れなく入れ込んで、可能な限りの時間をかけて分厚いレポートを書くのがいいと信じているのは、普通は経験がないかダメなマネージャーだ。経験豊富なマネージャーというのは、いかに最小限のリサーチと分析で最大限の成果を得るか。いかにしてみんなが、特に自分が早く家に帰るかを考えているもんだろ?さぁ頑張ってくれ」

僕のチームは、仕事持ちと子持ちと妊婦と遊び好きという変わった4人組なので、元から最小限のミーティングと最大限の戦略&情報共有をモットーとして、他に出されていた小さな課題にもうまく取り組んできたと思っていたけれども、もう一度仕切り直して体系的に調査と分析の方針を話し合っている。

2007年5月 9日 (水)

Top 10 International Countries Over 10 Years

20080508_1 今日ふと留学生センター(International Student Office)の前に張ってあったポスターに気がついた。
MITにいる大学院生は約6500人ほどで、海外からの留学生はその37%を占めているらしい。
日本はとっくの昔に留学生の出身国トップ5から転落している事を知った。この10年のトレンドがこのグラフ。
ちなみに、SDMの場合は恐らくアメリカ人と外国人の比率は逆転するんじゃないかと思うけれども、日本はここ10年で2人なのでランキングがどうとか言う以前の問題だ。
同じようなプログラムでもTPPとか、特にSloan Business Schoolは毎年数人いる。

国内の大学や産業の規模と質、国の政治経済などの状況にも大きく依存するので、別にMITに来ている学生の数が多い少ないで一喜一憂する訳じゃないけれども、世界情勢とあわせて考えてみると、かなり相関があるんじゃないかと思えてきて、そういう色眼鏡で見られないよう頑張ろうと思ったのでした。

2007年5月 7日 (月)

Flensted Mobiles

20070506_flenstedmobiles 誕生日に親から細長い箱が送られてきた。
ネクタイかと思ってあけてみたら写真のモビールだった。

日本ではなかなか家の天井から吊り下げられないのでほとんど買わないけれども、僕は子供の時からモビールが好きで夏休みの工作にも作ったことがある。
幼少の頃頻繁に訪ねていた祖父母の家にアコヤ貝か何かで作った魚のモビールがあって、動lきにあわせて虹色に変わる光とチャリチャリと鳴る小気味のいい音が好きでよく遊んでいたからかもしれない。

ヨーロッパの国旗色をした気球(これまた乗ったこともあって好きなのだ)がゆらゆらと揺れているのを見ると自然と落ち着くのだけれど、娘もすごく気に入ったようで近くに行くと飽きずにじーっと見ている。
僕をきっかけにした娘へのプレゼントだという噂もあるが、そうだとすると見事に成功している。

趣味にする気は無いけどこの一年じっくり楽しめそう。
ちなみにこのモビールはFlensted Mobilsというデンマークの会社の作品。日本でも専門店が神戸や東京などにあるみたいだけど、東急ハンズにもいくつか売っているのを見たことがあるので、意外と日本でも広く売っている物なのかもしれない。

とにかく僕には、あわただしくもエキサイティングな日々の中で、時折ゆったりと物事を考えるきっかけになっている。

2007年5月 6日 (日)

Sapporo Ichiban 2

20070505_sapporoichiban_1 先日お伝えした衝撃のサッポロ一番きつねうどん。実際に作って食べてみた。
麺は普通のインスタントうどんに比べるとコシがあっていいかんじ。
味もまぁまぁでした。でもやっぱりつゆは関東風の真っ黒で、これなら創味のつゆで作った方がおいしいかも。
でも妻はボストンで、79¢でこの味ならまた買ってもいいかも、とぎりぎり合格点みたい。

 

20070505_sapporoichiban_2 もう一つのサッポロ一番、塩ラーメンだと思って買った黄緑色のパッケージ、実はチキンスープ味だと言うことが作る直前に発覚・・・・・。
見た目は塩ラーメンっぽいけど味はしっかり鶏ガラ。UAの機内食で出る「きつねラーメン」と同じくらい微妙な味だった。
さらに店に行って気がついたけど、醤油ラーメンだと思ってたのはビーフスープ味ラーメンだった。

・・・・コンソメか?

やっぱりサッポロ一番はみそラーメンに限るのか?

2007年5月 5日 (土)

Engineering Risk Benefit Analysis

20070504_riskbenefitanalysis スペースシャトルの事故発生確率はNASAの中でも1/50から1/1,000,000まで意見が幅広く分かれていたという話は有名だけれども実際にリスクを見積もるのはコストを見積もるのと同じくらい非常に難しい。
もちろん現実的にはリスクがゼロになるなんてことはあり得ないわけで、最終的には見込める利益と比較して、そのリスクを受け入れるかどうか人間が判断するしかない。

僕が受けていた授業"Engineering Risk Benefit Analysis"は、じゃぁそのリスクと見込まれる利益についてどう予測するかについて考える授業だ。今期から始まった事もあってか大盛況だった。そのため250人ほども入る教室からあぶれた人用に、構内でのビデオ講義がなされる始末。
担当のGeorge Apostlakis教授はこの分野の発展に寄与したとしてアメリカのAcademy of Scienceの会員になっている。また、NASAのリスク分析についてもかなり貢献しているようだ。この資料の多くは彼が書いているんじゃないかと思う。

 

前置きが長くなったけれども、結局リスクと利益を考えるための基本は、想定される結果が与える利益や不利益、それぞれの発生確率を統計論や確率論(標準分布とか二項分布とかベイズ理論とか)を使って見積もることになる。

さらに利益や不利益は2倍になったからと言って、リスクも2倍にしていいかというとそうでもないのであらかじめ規定しておいた満足度で評価することになる。
つまり、1億円の宝くじに1万円払ってもいいと思っている人が、必ずしも1兆円の宝くじに1億円払ってもいいと思うわけでもないということだ。ましてや期待される利益(償金×確率)が同じなら普通の人はその1兆円の宝くじなんて買わない。

で、こういう話をすると必ず出てくるのは、「その発生確率とか満足度とかってどうやって具体的に決めるの?」ということ。
結論を簡単に言うと過去の状況を細かく観察して、そのデータから出すしかない。そのためにはすごく地道な仕事を長いことかけてやらないといけないので非常にコストがかかる。もちろん新しい物に対しては、過去の似た物から得たデータで類推することもあるけれどもその場合は当然不確かさが残る。ましてや何もデータがないのに予測値が出てきているのは勘でしかない。

 

と言うわけで、教授がさらっと言った言葉がエンジニアとしての僕には非常にショックだったし腑に落ちる物でもあった。

こういった確率論のみに頼った意志決定はしてはいけない。人が見積もった確率を論理的に説明できるわけではないし、必ず不確かさが潜んでいる。さらに対象となる物を取り巻く環境は常々変わっている中で、過去のデータが示していることが継続して起こらない事も多い(たとえば最初は故障が多くてもしばらくすると安定し、寿命が近づくとまた故障が多くなるバスタブカーブとか)。
しかし、リスク要素としてどの項目を重要視するか、少し値が変わっただけで結果に大きく影響するのはどこか(感度解析ですね)、何を重要視してどの程度まで期待したり許容するか、各関係者が考えている事を白日の下にさらし議論を発展させるのには非常に有効だ。
そして、最終的にはこの理論と議論の結果を持って、人が「どうしたいか」判断するしかない。

数式をいじくり回す宿題は大変だったけれども、だからこそこの言葉が重く響いたのかもしれない。

2007年5月 4日 (金)

You, entrepreneurs are liars!

20070503_you_liars 「君たち起業家は嘘つきだ」という一言で始まったのは、山場を迎えている製品開発の授業。
新しい技術を開発して商品開発して儲けようと思ったら、特許取って資本を借り入れて会社起こすことも多いアメリカだし、授業でもマーケティング、特許取得と対策、ビジネスプランの作成についてももれなく勉強させてくれている。

今日はベンチャーキャピタルを運営している卒業生が「どうやったらベンチャーキャピタルから投資を受けることが出来るか」ということを話しに来てくれた。

個人的にはいくら金持ちがうらやましくてもマネーゲームに没頭する気は毛頭ないのだけれども、自分で開発した物を売るというのは考えると面白そうだし、そのゲームのためにはお金が必要なのは当然なので興味深く聞かせてもらった。

しかし現実はそれほど甘くない。彼の経験では投資した件数の85%は芽が出ずに終わる。
その代わり、15%では投資から5年以内に1億ドル以上の収入を得る企業に成長するし(それ以下は敗者、らしい)、ベンチャーキャピタルも最低で投資の5倍以上のリターンを得ることができるので成り立つのだそうな。それでも、ビジネスプラン以上の収入を得た企業は最近5年の121件中たったの1件だったとのこと。そりゃ嘘つき呼ばわりするのも納得。

さて、ベンチャーキャピタルから投資を受けるには何が必要か。
もちろん魅力的な技術や特許が必要なことは言うまでもない。プロトタイプがあればなお良い。
そして、商品が出来れば買うと言ってくれている客がどれだけ付いているか、販売してくれるルートがいくつあるか、市場のアナリストから良い分析結果を得ているか。逆にマスコミでいくら取り上げられようが、どこぞの賞を取ろうが投資にはあまり関係ないらしい。
最後は、あなたが誰から推薦を受けているか、職歴と人脈から見てCEOとしてどれだけの手腕が期待できて優秀なチームを長期的に率いていけるかが非常に重要とのこと。ビジネスにはドライなアメリカというイメージがあるかもしれないけれど、やっぱりコネは非常に大きな力を持つ。

「できるだけ多くの人と会って話せ、わからないことや興味を引かれることがあったら質問し続けること、黙っていて得なことはない。すべては君の人脈にかかっている。これ抜きにしては俺が今日しゃべったこと全部ゴミだ。」
そういって彼は帰っていった。

ハーバードビジネススクールの学生は、授業の成績がAであるような最低限の努力をして、最大限人脈作りに励むため、生活費の4割は教授やビジネス関係の交遊費という話もあながち嘘ではないようだ。

もっとも、最近はMBAを取得して起業して大成功したCEOが多いかと言われると疑問だけれど。

2007年5月 2日 (水)

May

20070501_may 気がついたら5月。
既に夏のセッションと秋学期のクラス登録が始まっている。
あまり選択授業を取っている余裕も必要性も無いのだけれど、一つぐらいは面白そうな授業を探してみる予定。Sloan(MBA)の授業は、取りたい授業に対して手持ちのポイントを配分して賭けるBiddingシステムなので、よくよく考えなければ。

気がついたら娘は3ヶ月。
風呂に入れた後に計ってみたら身長61cm、体重6.8kg。
さすがに女の子なので当時の自分には及ばないけど、ちょっと太めかも・・・・。
それでもよくぞここまで大きくなったなと思う。

学校も子育ても変化の早さについて行くのが大変だしあっという間に毎日が過ぎていく。
それでもふと振り返ると、たどってきた道筋と変化の大きさに驚かされる。
貴重な経験をさせてもらっていることに感謝。

写真はキャンパスから望むチャールズ川とボストン市街。

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