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2007年6月30日 (土)

ものづくり ~プロジェクト失敗の原因~

20070629_1 とあるレポートによるとプロジェクトが失敗する最大の原因は、プロジェクトが製品開発を進めるための拠り所とする「要求」が間違っていることだと言われている。もちろん失敗する理由はその他にも山のようにある。ドストエフスキー(だったかな?)が言ったように「幸せな家庭は皆一様に幸せだが、不幸な家庭が不幸である理由は様々」なのだ。

この要求は顧客や製造、運用、廃棄、販売、組織運営、その他そのプロジェクトが開発する製品に関係するあらゆるところからプロジェクトに対して出される。それらの要求が間違った事実に基づいていた(なんとこれが一番多い!)、見落としていた、一貫性を欠いていた(矛盾していた)、曖昧で一意的に解釈できなかった、などがプロジェクトを失敗に導く。もちろんプロジェクトが始まる時にあらゆる要求を100%知っておくのは不可能だ。なので開発を進めながら常にフォローしていかなければならない。柔軟に対応できればいいけれど、時既に遅しということは往々にしてある。そんな場合はそれを制約条件として、ベストな道を進むことになる。

更に始末が悪いのは、そもそも間違った要求が出てくることさえ日常茶飯事だということ。つまり、顧客を含め、要求を出す側が常に正しいことを言っているとは限らないしそれに真正直に応えようとすると苦労するのは多くの人が経験していることではないだろうか。

開発を進める中で変化する要求を漏れなく把握する事に加えて間違った要求を見つけて修正していく。これは決して楽な事ではないし、だからこそ多くのプロジェクトが失敗するわけだ。残念ながら、これは膨大な作業を地道にねばり強くやっていくしかない。万能な特効薬は存在しないのだ。

それでもどういう考え方でどういうツールや方法論を使えば多少は効率的に進められるかと言うことをシステムズ・エンジニアリングは教えてくれる。それをこれから少し具体的に掘り下げて行こうと思う。

2007年6月29日 (金)

WINDS愛称募集

20070628_1 来年打ち上げが予定されているインターネット衛星WINDS、開発も大詰めを迎えたようで昨日プレス公開されたとのニュースが聞こえてきた。それと同時に愛称の公募が始まっている。自分が考えた名前が衛星の名前になって半永久的に高度36000kmを超える距離で地球の周りを回り続けるというのも悪くないと思うので、いい名前を思いついた人は是非ともこちらのサイトから応募してほしい。

さて、この衛星の開発がスタートしたのは確か2000年頃だったと思うので、始動からサービス開始までに少なくとも7,8年要することになる。そしてその間にインターネットを中心に、通信環境は大きく変わってしまっている。これからのグローバル通信サービスとして意気揚々として始まった衛星通信サービスのIridiumやGlobal Star、Orbcommなどが地上の通信網の劇的な発展によって破綻し、アメリカの軍が支えていると言っても過言ではない。衛星放送サービスも大手が統合を余儀なくされている状況で、商用通信サービス市場はあまり順調とは言えない状況だ。

とはいえ、ビジネスではなくて国が公共サービスとして(正しくはそのための実験として)

  • 突然の災害時に(いつでも)対応できる丈夫な通信
  • 現在、通信が不便な地域に(どこでも)通じる快適な通信

を実現させるというのは決して間違った話では無いと思っている。携帯電話の人口カバー率が99%を超えたと言うけれど、商売にならないからと言ってサービス対象から切り捨てられる1%の人たちにサービスを提供することや、緊急事態のためのセイフティーネットを張ることは国の仕事として必要であると思うからだ。

それでもMITのクラスメートにこの衛星の目的を説明するときにどうにも困ることがいくつかある。

まずは、衛星ブロードバンド通信環境を実現するための「最初のステップ」と位置づけられている割にはその後どう発展させて行きたいかが報じられていないこと。5年寿命の衛星の開発に8年かかっているのだから次の衛星を今から開発しても数年のブランクが生じることになる。これまでに国の衛星で後継機と同時並行で開発された衛星は知らないので何か政治的な制約があるのかもしれないし、それを受け入れたとしても日本が具体的な戦略をどう取っていきたいのか問われても残念ながら全く答えられない。

次に、僻地でも快適な通信環境を構築する事に成功したとして、地上通信網と共に発展していったときにいつかはサービス地域や対象がバッティングする。この通信サービスがコンシューマ向けだと考えると地上網に移行していくことが自然なわけで、衛星通信サービスは一時的かつ補完的なものなのだろうかということ。もしあるとすればどこに共存点や衛星通信の発展性があるのだろうかと言うこと。

ある時点でのスナップショットではなくて長期的な観点で技術やサービスの戦略を見据える。自分たちは誰に何を提供してその実現と運用ために必要なことは何かを明確にする。そしてサービスの価値を考えるには必ず似たようなサービスを提供する他の手段と比較して考える。
Technology Strategy、 Value Creation & Capture. これは何をするにも当たり前のことだけれど簡単なことではない。だからこそSDMプログラムでは皆で繰り返し考えて学んでいる重要なことの1つだ。

写真はJAXA提供。当然ながら緑やピンクのビームが出るわけではなくて目に見えない電波が出ます。

2007年6月27日 (水)

Grad Rat

20070627_1 20070627_2 今日はこの夏一番の暑さで気温は36度まで上がった。さすがに暑いけれど、空気が乾燥しているので汗はほとんどかかない。昼ご飯は太陽の日差しを受けながら芝生の上で食べたのだけど不快感は全くなく、むしろ照りつける太陽が気持ちいい。その後、授業が始まるまで今度は校舎の階段に座って日陰で食後の熱いお茶。これも時折吹く風が心地よくて楽しんでしまった。冬は本当に寒いけれどその代償としてやってきた気持ちのいいこの気候を今のうちに思う存分楽しまなくては。

さて、MITの学生は卒業に合わせて(合わせなくても良いみたいだけど)Grad Ratという卒業記念の指輪が買える。学位、卒業年度、所属コースに合わせてカスタムで作ってくれるのだ。材質はステンレスから18Kの金まで、トップのサイズもXSからLargeまであってLargeは僕の大きな手でも不自然なくらい大きい!そして金なので文句は言えないかもしれないけれどやっぱり高い!一番高いのだと$700近くする。ちなみに学部生は金の代わりに真鍮なので非常に安く、名前もBrass Ratと呼ばれている。

指輪は写真の通りいかにもアメリカンなごついリングだけれど、意外とアメリカ人はこれくらいの大きなリングを普段から着けていたりする。教授でもこのリングを授業で着けている人を見かけるぐらいだ。

その指輪の価格が7月1日から10%以上も上がるので、どうせ買うならと思ってこのタイミングで1つ注文してしまった。これで卒業できなかったら非常にかっこわるいのでいいモチベーションにもなるはず。
面白いことに指輪を注文したクラスメートの中でアジアから来ている人たちは大抵スモールサイズ。滅多に着けることが無いとしても、文化的にあんまり大きいのは恥ずかしくて出来ないよな、と顔を見合わせて苦笑いしてしまった。

ちなみに、この指輪は卒業前に着けているとビーバーが鋭い歯で攻撃してきて卒業するのに痛い目に遭うと言われている。さらに、指輪を上下逆に着けていると歯が他人に向くので、クラスメートが痛い目に遭うらしい・・・。注文した指輪が2ヶ月くらいで届くのは楽しみだけれど日本に帰るまでは大事にしまっておこうと誓ったのでした。

2007年6月25日 (月)

ものづくり ~Mission Statement~

20070625_1 Product Planを立てるにあたっては、競争のための戦略、製品プラットフォームの戦略、ポートフォリオのバランス見積もり、リソースの割り当て、参入タイミング、などなど考えなくてはならないことが沢山あるけれど、これらの最後の締めくくりに作るのがMission Statement、あえて日本語にするなら趣意書とでも言うのだろうか。自分たちが何を狙いとして何をやろうとしているかを簡潔に示しておくものだ。

これはプロジェクトがどの方向へ向かうべきなのかを宣言しておくもので、トレードオフやオプションを考えるときに立ち戻る場所として非常に役に立つ。仕事でも新しいプロジェクトの提案をする前段階では作っていたことが多かったけれども、プロトタイプの製造まで通してフォローしたのは初めてだった。そこで気づいたのは、実は製造設計で様々な制約や現実解を探る中で膨大なトレードオフに悩まされていたときにかなり役に立ったこと。具体的な設計に夢中になるとついつい忘れてしまいがちな目的や理念を思い出させてくれた。もちろんプロジェクトを進めていくにつれて、想定していたことが間違いだとわかったり、考えなくてはいけないことが増えたりするのでこの文書も変更されていく。

この文書で書くべき事を教科書的に挙げると以下の通り。

  • 開発する製品は何を提供するか
  • 主な目標(具体的に達成したい事)、目的(狙い、方向性)
  • 主要なマーケットと二次的なマーケット
  • 現時点での前提/想定条件、制約条件
  • 想定する利害関係者(ステイクホルダー)

僕らは授業でのプロジェクトと言うこともあって、最初の3点に注力して書き上げた。チームによってどこに重きを置いて詳しく書いているかはかなりばらつきがあったようだけれど、どうしてもどういう製品をどのマーケットで売るかは書きやすくても、目標や目的については書きづらい傾向が有るようだ。

それにしてもこのMission Statementは下手をすると作ったとしても神棚に飾っておくような存在であったりすることが多い。個人的に思うのは、この手の文書は、まず合意をきっちり取ってから進めたがる欧米的な文化やキリスト教のように聖書が絶対という文化の元ではわかりやすいようだけれど、そういうバックグラウンドがない日本では強いリーダーシップに期待しているのが現状かもしれない。

2007年6月24日 (日)

ものづくり ~Product Plan~

20070623_1 残存記憶のように多少の頭痛がある以外はすっかり良くなりました。ご心配をおかけしました。

さて、それでは久々に物作りの話に戻ろう。
よく言われることだけど「自分たちの作りたいものを買ってくれる客を捜すのではなくて、何かを買いたい客を見つけてそのために自分たちの力で可能なものを作る」ことが成功への近道だ。もちろん買い手は欲しいものを明確にわかっていなかったり、性能とコストとのバランスを考えずに非現実的なものを求めてきたりするのは良くある事。なので、こういうものなら開発可能だけど買ってくれるだろうか、と逆に問いかける必要は常にある。

要は、作った側から主観的に見て良いものだからニーズはあるハズだし売れるハズという考え方は危険だという当たり前のこと。こんなの作ってみました的な製品も有ることは確かだけれど、それは実験的にニッチなマーケットで客の反応を探るための製品がほとんどだろう。

なので、新しい製品開発を始めるにあたっては事前に計画を立てる事になるけれど、その第一歩として、どのマーケットのどのセグメントにどういうチャンスが有るかを見つける活動が必要になる。
ここで陥りがちな間違いが、計画立案を社内の一部のグループだけで済ませてしまうことだ。こういった計画は必ずどこかに見積もりの甘いところが潜んでいて、それが大きな間違いだった場合に遅かれ早かれプロジェクトが破綻する。

  • マーケティング/セールス部門
  • 会計部門
  • R&D部門
  • 既存の製品開発部門
  • 製造部門(社外のサプライヤー含む)
  • 運用部門
  • その他製品に関連する特有の部門(安全、法律、海外などのロジスティクス担当)
  • 既存製品のユーザーもしくはターゲットとしたい仮想ユーザー

これらのあらゆる関係者が、ユーザーの不満や社会動向の変化の分析、競合製品の分析、新しい技術動向、自分たちが使えるリソースの分析などを繰り返し行って「こういうものが有れば売れるのでは?」という領域を見つけていく事が望まれる。当たり前のようで実行するのは結構難しい。

2007年6月22日 (金)

INCOSE Annual Symposium

20070622_1_1

授業に出る以外は何もしないで寝ていたらだいぶ良くなりました。

さて、来週は世界最大のSE推進団体、INCOSEの年次シンポジウムが開催される。これまで5年にわたって毎年参加していたけど今年は授業があって行けないのが残念。このシンポジウムには世界中からSEの専門家が集まるので、論文発表を聞くのも面白いし様々な参加者と交流を深める事が出来るのが一番の魅力かもしれない。

最近は台湾、インド、シンガポールを中心にアジアからの参加者が増えているとはいえ圧倒的少数で、特に日本人は数人なのでシンポジウムでは結構目立つ。悲しいような嬉しいような複雑な気分だけど、その理由の1つには日本のように世界で車、プラント、ガスタービンエンジンなど比較的複雑で大きな工業製品を大量に輸出している国は、もっとINCOSEでの存在感を見せてもいいのではないかと思われている事があると思う。

もちろん文化的に欧米のSEと多少そりが合わないところとか、産学間の協力が少ないのでデータがあまり出てこないことがあるとしても、あまりに声を出さないのでミステリアスな国だと思われているのは何とも歯がゆい。もっとも僕も日本的な文化や考え方を上手く説明できたらなと思いつつ、こちらのブログで見つけたような上手い説明はなかなか出来ないでいる。

ちなみにINCOSEの会員は2007年6月現在で約7200人(日本地区所属29人)。プロジェクトマネジメントの団体PMIの会員数24万人(アジア地区6万人のうち、日本地区所属は3000人弱の模様)には遠く及ばないけれど、今年の3月にINCOSE日本支部も正式に承認されたことだし加速をつけたいところ。

個人的には欧米のSE万歳というわけではなくて、日本のものづくりにも欧米には無い誇るべきところが沢山ある。それでも欧米のように、企業独自のノウハウは隠しつつも、抽象化した情報だけでも皆で共有して刺激し合っている状況に比べると、トヨタ生産方式などが多少知られているだけで公開されている情報が非常に少ないように思える。各企業がそれぞれの経験と知識を独自に貯め込んで、しかもそれは全てが口伝直伝で伝えられていないだろうか。技術は文書化しても伝わらないことの方が多いけれど知っていれば済むことも沢山あると思うし企業の壁を越えて共有できることも沢山あると思う。

これは日本の産業界にとっても非常にもったいない気がするのは僕だけだろうか。それとも日本企業は日本らしく、企業間のコネで情報交換しているのだろうか。いや、そうだとしてもやっぱりもったいないな。

2007年6月21日 (木)

ダウン

20070621_1 この1週間で4つのレポート、夏学期始まっていきなりトップギアで頑張っていたら睡眠不足がたたったようだ。終わったとたんに38度の熱を出してダウンしてしまった。
最初は単なる寝不足だと思っていたので、昨日は午後の授業が終わった後にまっすぐ家に帰ってすぐ2時間ほど寝てたら眠気は無くなったものの体が熱くだるいことに気づいた。

薬を飲んで一晩寝たらだいぶ良くなったけど、やはり複合要因があると全ての要因を一度に理解するのは難しい。
静養して1つ1つ治していかねば。

2007年6月18日 (月)

ものづくり ~始める前に~

20070617_1 企業で実行されるシステム開発のプロジェクトは、複数同時に進行していて、しかも進捗度合いがずれている事が珍しくない。なのでいくら魅力的なチャンスを得たと思ったとしても、何も考えずにプロジェクトを立ち上げる訳にはいかない。
自分たちの持つ限られた人材、技術、設備、資本、それら全ての中で実行できなくてはならないことはもとより、そのプロジェクトが成功することによって単に利益を得るだけでなく、組織自体が価値を増すようなものであることが望ましい。

そのために考えなければならないことは山ほどあるけれど、自分たちが開発しようとしている製品が次の分類のどれに当てはまるかを把握しておくことは非常に有用だ。

新しいプラットフォーム製品
自分たちのビジネス分野で、新しい製品ラインアップを立ち上げようとするもの。一種類の製品だけではなくて、例えば大型から小型、廉価品から高級品、ひとそろいのファミリー製品や発展性を見据えて開発する必要がある。H-2Aロケットの開発などが例に上げられる。

既存プラットフォームの派生製品
既に売り出している製品ファミリーをベースにして、マーケットのニーズや技術の発展に合わせて新しい製品を開発する場合で、H-2Aロケットの様々なラインアップを増やしていくとに当たる。

既存製品の改善
新しい技術の導入や、小規模な改良を施すことで製品の競争力を維持する事が目的となる。コンピューターのアップグレードや新素材の導入などが当てはまるが、下手をすると思わぬところに悪影響が出たりもする。

新分野の製品
これまでに全く経験がない分野へ進出するもので、非常にハイリスクな事は間違いないけれども、市場の変化に対応して長期的に生き延びていくことを望むなら不可欠なもの。開発を進める中でどれだけ学習して改善していけるかが成功のキーになる。例えば有人ロケットの開発に踏み出すということや、先日EADSが発表した宇宙旅行のためのロケットプレーン開発などもこれにあたるかもしれない。

もちろん単発的に1つの製品を開発することもあるかもしれないが、それがどういう結末を導くかは、国産旅客機YS-11や有人月探査計画Apolloを見れば明らかだろう。製品自体は単発であったとしても、それがうまくいったらその先はどうなるかを考えて、それを開発することで得た該当分野における技術や組織の能力、ビジネスの機会をいかにして持続的な発展が可能なものにしていくかを考えておくことが必要なのだ。

2007年6月16日 (土)

Product Development -ものづくり-

20070615_2 好きなものを自分のこだわりで手間をかけて作るのは楽しい。しかし商売でものを作るとなれば話は違う。なにより売れなければならないし、利益をあげなければ企業は存続し得ない。世の中には売れずに消えていった優れた商品もあれば、逆に他にもっといい商品があるにもかかわらず世の中に普及している商品が沢山ある。
それでもそういった商品が売れたり売れなかったりするのはそれなりの理由があるのだ。

  • 欲しいと思えるものが(機能、性能、サイズ、重さ、見た目など)
  • 買ってもいいと思える値段で
  • 欲しいときに手に入る

単品では上の条件に当てはまらなくても、より大きなシステムの一部として不可欠なものであればその大きなシステムを題材に考えて欲しい。やっぱり買ってしまうのだから、だいたいの場合は当てはまってしまうのではないだろうか。
そして製品開発の活動において、この三つの条件を満足させるための活動がシステムズ・エンジニアリングで、活動に必要な労働力、予算、資源を上手くやりくりするためにプロジェクト・マネージメントがある。さらには特許、事務手続き、活動に必要な環境の手配などがロジスティクスに当たる。

システムズ・エンジニアリング、プロジェクト・マネージメント、ロジスティクス、これらを上手くバランスを取りながら組み合わせて、しかも顧客を初めとして商品の開発、製造、販売、メンテナンスに関わる全ての関係者の意向に配慮しながら全体的に上手くまとめてゴールにたどり着くことで、技術が生かされて魅力的な商品ができあがる。

これはもちろん教科書で勉強するだけで身に付くものではない。実経験から体得するしかない部分もあって、前者を手にとって学ぶことが出来るハードスキル、後者を形のないソフトスキルと呼んでいる。
なので製品開発のプロセスを学ぶに際してハードウェアとソフトウェア、どちらでも良いけども実際にものを作る経験は欠かせない。

日本でもこの手の授業は増えていると思うけれど、次回は僕がこちらで体験した授業を振り返ってみたい。

Road Test合格

20070615_1 今日は授業が無かったので、前もって電話予約をしていた自動車運転免許の路上試験に朝から行ってきた。

マサチューセッツ州は数ある州の中でも運転免許の取得が難しい州らしく、初めて運転免許を取るには教習所に通わなくてはならないらしい。僕は国際免許を持っているのでその必要はないけれど、「スポンサー」を連れて行かなければならない。スポンサーというのは試験の立会人みたいなもので、アメリカの運転免許を1年以上保有している21歳以上の成人でなければならない。幸い僕の場合は昼ご飯をおごるくらいでつきあってくれるクラスメートが沢山いるので事なきを得たけれど、そういう人がいなければ教習所にお金を払って頼まなければならないらしい。

試験に使う車は自分で用意しなければならないので一応は計器とライトなどをチェックしてから出かける。途中でアメリカ人のクラスメートを拾って自分で運転して指定された試験場所へ。自動車免許の試験に自分で運転しながら行くというのも変な気持ちだけれども仕方がない。
会場に行ってみると、想像していたような試験場があるわけではなくてその建物の前の道にあった、駐車できる路側帯で順番を待つというものだった。軍の訓練所と聞いていたから変だとは思っていたけれどそこまで簡易に済ませるとは・・・。

しばらく順番待ちの末にカウボーイハットをかぶった若い警官に書類を渡して試験開始。
まずは車のチェック。ヘッドライト、各種ランプ、方向指示器、警笛、サイドブレーキに問題ないことを確認する。整備不良で落ちたりすると悲しすぎるけど無事にパス。
その後はおきまりのハンドシグナル。右、左、ストップ。
で、いよいよ発進。当然普段以上に左右確認やら一旦停止を大げさにする。で、やっぱり交通ルールについて突如質問が入る。
警「ここの制限速度は時速何マイル?」
僕「え・・・サインが見あたらなかったですけど20マイルでしょうか」
警「そのとーーり。右に見えるように学校があるところでは20マイルだ」
僕「イエス・サー(そ、そうなのか・・・)」
警「で、学校を通り過ぎたけど今の制限速度は?」
僕「・・・・30マイルでしょうか?」
警「そのとーり。わかってるねぇ」
僕「オフコース・サー(ふぅ)」
警「あ、ちょっとそこの交差点前で止まって。ここで注意することは何?」
僕「一旦停止と一方通行のサインです。見通しが悪いので飛び出しにも注意です」
警「うむうむ。」

と、結果オーライながら順調。その後は路肩寄せ(Pull Over)をやって10mくらいバックで進める事の確認。
警「バックするときの速度は?」
僕「制限速度は10マイルかと」
警「ちがーう、駐車場とかで10マイルなんて出してバックしたらえらいことになるぞ」
僕「・・・・(滝汗)」
警「1,2マイルの微速じゃないとダメだ。何でかわかるか?」

いやー、焦った。もうダメかと思ったけど必死で考えて答える。
僕「車の後ろにあるものは全て見えるわけではないので、いつでも止まれるようにです」
警「そのとうりだ!何があるかわからないから注意するように。じゃ、進んで」
僕「イエス・サー(おぉなんとか耐えたらしい)」

そしてしばらく走った後にまた質問がきた。
警「で、君は日本から来たようだけど、マツザカはどう思う?」
僕「はいっ?」
警「ダイスケ・マツザカだよ。彼、なかなかやるよなぁ。」
僕「え、ええ、でもこれからもっと良くなると思いますが」
警「そうか、今でも十分すごいじゃないか。それは楽しみだなぁ」

黙っているようにと言われていたクラスメートも雰囲気を察して話に加わる。
ク「オカジマもすごいっすよねぇ」
警「おーそーだ、彼もすごいぞ、なんせ19イニング連続で抑えたからな」
ク「投げるときのスナップが違うんだそうですよ」
警「なるほど、確かにリリース直前でクイッとくるよな」

と、こっちは試験でてんぱってるのに2人で大盛り上がり。
そのうちRound Aboutに差し掛かって止まったけれども、ほったらかし。
僕「あのー、どっちに行けば・・・」
警「あぁ、右ね、でスタート地点に戻って」

とっくに試験は終わっていたらしい。

クラスメート曰く、警官などの公共サービスに従事している人は、多少話しかけてコミュニケーションをとった方がフレンドリーになるので有効だとのこと。そんなことを言っても試験運転中にはとてもじゃないけど無理だ。せめて試験前に言ってくれればスタート前に話しかけたのに・・・・

ともかく、サインしてもらったLearner's Permitを自動車登録局に持って行って料金$60を支払えば、一週間ほどで免許証が郵送されてくるらしい。

2007年6月14日 (木)

論文提案が通る

20070613_1 かねてから懸案だった研究課題が決まった。今日の午後にアドバイザーをお願いしてメールでやりとりしていた研究者に、かねてから送っておいた提案書を承認してもらい、サインをもらうことができた。
ドラフトを送ってからなかなか返事がもらえなかったのでちょっと心配していたのだが、単にとてもとても忙しかっただけのようで、ほとんど変更や追加なしで認めてもらえた。

そのアドバイザーはDonna Rhodes博士。彼女はMITのSystems Engineering Advanced Research InitiativeというSEの研究所に所属していて、僕が参加しているSEの団体INCOSEでも活発に活動しているSEの専門家だ。INCOSEのシンポジウムで航空宇宙産業におけるSEの最新動向についての彼女の講演を聞き、強烈な印象を受けたのが確か2004年頃だったと思う。それから3年越しにMITで会って論文のアドバイザーになってもらえるのだからとても嬉しい。
もちろん修士論文でしかも半年で書き上げるものなので研究する範囲、深さ、ボリューム、どれをとっても限られている事は確かなので、その中でどれだけきらりと光る内容を入れられるかが鍵になる。

「12月初めには第一稿を書き上げて」と言われているので既に半年を切っている。この夏はMITのオンラインを中心に関連の論文を探し回ってひたすら読み込む事になりそうだ。急がば回れ、じっくりと過去の研究例を理解しながら9月、10月に行う予定のデータ解析に向けての作戦を練る予定だ。
研究の内容については追って報告するのでお楽しみに。

2007年6月11日 (月)

Spring Term Grade

20070610_1_1 夏学期開始を前に、春学期の成績が出ていることに気がついてWebで確認。成績評価の対象となる授業は7つあったのだけど、平均が5点満点中4.8点。全てAかBというのは予想していたけど、Aが思った以上に多く平均点が予想以上に良かったので嬉しい。Bが付いたのは2つで、マーケティングとファイナンス関係の授業。多少あきらめていたところもあるので納得はしている。それ以外でも、クラスでの発言が重要視される授業にはいくつかA-が付いた。なので傾向は予想通りだった。

他のクラスメイトがどれくらいの平均点をとっているかはわからないけど、企業から派遣されているアメリカの学生はだいたい平均点で4.5点以上を期待されていると聞いているのでそれに比べても悪くないので一安心。
単に採点が甘かったのかもしれないけれど、ディレクターからは「留学生ならAが取れなくてもBである限り上出来だ」と言われていたので教授にも頑張りが伝わったのだと思いたい。

とはいえ心底満足できているわけではないことも確かなのだ。それぞれの授業で一緒にグループワークをしたチームメイトにはまだまだ英語能力の不足分を埋めてもらっている状況だし、正直に言って4.8点に胸を張れる状況ではない。さらにこれから始まる論文は自分の能力がフルに試されるので、もっと頑張らないとただでさえチャレンジングな13ヶ月コースをスケジュール通りに卒業するのは難しい。それでも昨日、春学期に組んだチームの1つから夏学期の授業でもう一度チームを組もうというオファーが来たのは、単純ながら自信と励みになっている。

夏は4つの授業と論文のための研究。単位数は54で春学期とほぼ同じなので休みぼけをしている暇はない。

さぁ頑張ろう。

2007年6月10日 (日)

Japanese passport

20070609_12 日本にいる親に頼んで取り寄せてもらった娘の戸籍謄本がようやく手元に届いた。発行手数料を支払う手段が郵便小為替だけというのは本当にやめて欲しい。クレジットカードで払えるようになるのはいつの日か。とにかく今は親に感謝である。
というわけで、万が一としても緊急帰国する可能性はあるわけで、早速ボストン領事館まで出かけて娘のパスポートを申請してきた。

今回も写真は自分で撮影。ただしアメリカのようにシーツのしわが写っていたらダメだと言われる気もしたので、授業で余った大きなポスター用紙の上に寝かせて綺麗な背景の上で、苦労して笑顔を撮る。撮ったらもちろんお店でプリント。

ボストン領事館での申請手続きはとても簡単。空いているので待ち時間もほとんどゼロ。娘の戸籍にはアメリカのミドルネームを入れていないけれど、パスポートにはミドルネームを別名表記という形で入れることにした。アメリカのパスポートにあるミドルネームが無いと同一人物であることの照合に支障をきたした話を聞いたためだ。普通なら[名字][名前]でタイプされるところが[名字] [名前] ( [名前] [ミドルネーム] )と言う形でパスポートには記載される。署名の欄はもちろん代筆したけれど、妻に「きたなーい」と怒られてしまった。

と言うことが有りながらも無事に申請終了。受け取りはなんと1週間後からできる。早い!郵送で事が済むアメリカとは違って、必ず本人が来なくてはならないらしいので娘を連れて出かけていかなければならないのは面倒だけど早いのは良い。ちなみに、2ヶ月以上前に申請したアメリカのパスポートはまだ発行されない。

僕には、多少面倒でもきっちりやってくれる日本の方が性に合っている。もちろんもうちょっと簡便にしてくれればいいのは間違いないけれど。

Thesis Proposal

20070609_11 昨日はMITの卒業式。月曜日から始まる夏学期の教科書を買いにCOOPまで出かけたら記念品を買い求める家族連れでごった返していた。Sloanは建物の前でパーティ、みなさすがに晴れやかな表情をしている。卒業式は年に一回なので、1月に学位を受けた場合にも式典に出たいならば6月に戻ってこなければならないけど、是非ともそうしたいと思わせる光景だった。

さて、僕が参加しているMITのSDMプログラムは工学修士の学位をもらえるので論文を書かなければ卒業できない。ただ、僕たちはどこかの研究室に配属されるわけではない。自分で研究をしたい分野の教授をつかまえて、アドバイザー、スーパーバイザーとして研究を指導してもらい、卒業時には修士論文として認めてもらうことが必要なのだ。

最短の13ヶ月で卒業しようと思うと、夏学期には論文のための研究テーマを決めて、研究を始めないと間に合わない。既に卒業まで7ヶ月間しかないし授業を取りながらなのでかなり忙しいことは間違いない。僕もほぼ指導教官の目処をつけて最終的なテーマを選定し、Thesis Proposalと呼ばれる文書の作成と最終調整を進めているところだ。

このThesis Proposalと言う文書は日本の大学では学士、修士の時には書かなかったし、そんなものがあることさえ知らなかった。書かなければいけない主な項目は次の通りだ。

  • 論文タイトル
  • 動機
  • 研究の主要目的
  • この論文で取り組む事(Thesis Statement)
  • 工学およびマネージメントの観点から見て含まれる内容
  • 研究の進め方
  • スケジュール

要は研究を始める前に、どのような研究を・なぜ・いつまでに・どうやって進めるかの計画を立てるのだ。
SDMの学生は100%社会人経験を踏んでいることもあって、多くの学生が企業での事例検証(Case Study)を行う。教授も理論に対する検証事例が増えるのでこれを好む事も手伝っている。理論の構築や企業から出資を得て実験をする学生はかなり少ない。
もちろん事例検証が簡単かというとそうでもない。企業の情報を外部に出すことになるので、いかに情報を匿名化して企業の了解を得るかが問題になる。軍事産業や、航空宇宙産業の場合は特に難しい問題になる。中には論文を書き終える直前になって企業から待ったがかかった例もあるらしく学校側も非常に気を遣っている。

ただ、欧米の企業を題材にした事例検証の論文を読み込むうちにすごいなと思うのは、設計変更や仕様変更をいちいち文書にして記録していること。一日に個人が何回もその記録を書かなければならない場合もあるだろう。その徹底的な文書化による開発管理と、ある程度人に任せて定期的に記録をまとめて取るやり方と、費用対効果でいうとどちらがいいのかはわからないけれども、何が起こっているかを把握して改善していくには前者の方が向いている気がする。

というわけで、多分に漏れず僕の論文も文書ベースのデータの分析ではなく、インタビューや記憶を頼りに分析をする割合が多くなりそうな予感がしている。

2007年6月 7日 (木)

NY Entertainments

NYは昔から自称「世界の首都」をうたっている。野球のワールドシリーズと同じようにアメリカ特有の誇張だとしても、人々を引きつけてやまない都市であることは確かなのだ。

見るものが沢山あるNYを2日で見て回るのは不可能なので、今回は的を絞って観光した。

  • Central Park

20070606_32a 20070606_32b ここはあまりに広いのでくまなく歩いて回るのは不可能だ。晴れた日の朝に南の端っこを少し回ってみただけだけれどとても気持ちが良かった。子供用遊園地ではしゃぐ子供達、野球場での少年野球、障害者支援のパレードで盛り上がる人たち、ジョギングにサイクリング、皆思い思いの方法で公園を楽しんでいて、そういった人たちを見ているだけでも飽きない。意外と起伏があるので公園と言うよりも丘を探検しているような気分にさせてくれるのもいいところだ。

  • Empire State Building

20070606_33a 20070606_33 NYに来たら一度は登っておくべきだろう。前回は日が沈む頃を見計らって登ったところネオンが非常に綺麗だったのだが、1時間待ちの大行列に並んだので今回は朝一に。しかもチケットを事前にネットで買っておいたおかげで10分と待たずに94階の展望台まで登れてしまった。娘も気圧の変化などを嫌がるかと思いきや全く平気でむしろ上機嫌でマンハッタンを見下ろしていた。

  • Museum of Modern Arts

20070606_35ajpg 20070606_35 通称MoMA。2004年に日本人デザイナーの手によって完全に新しくなっている。前回来たのが1997年だったから改装後は初めて。前回あったピカソの山羊の彫刻が見あたらなかったのが残念だったけど、近代絵画、彫刻は申し分なし。この美術館が面白いのはパリのポンピドゥーセンターと同じく、近代工業製品もおいてあること。タイプライター、自動車(ジャガーだった)、初期のIBMコンピュータの制御盤、レゴブロック、iMacまでおいてある。その中でもこの目で確かめたかったのはauのデザイン携帯があるかどうか。

確かにあった。4種類採用されたと聞いているから時々変わるんだろうけどもアートとして飾られるとそれっぽく見えるから面白い。

  • Musical "Beauty and The Beast"

20070606_34 Mamma Miaと迷った結果、英語がわかりやすいだろうという予想と、7月29日で講演終了ということを知って決定。会場には買ってもらったと思わしき造花のバラを握りしめてた小さなお姫様達が沢山いてほほえましかった。講演自体は舞台装置の配置と空間の使い方が絶妙で、狭い舞台を行ったり来たりしているだけでも違和感なく見られたし、役者の演技もすばらしかった。これまで5本見たミュージカルの中で、レ・ミゼラブルに次ぐ満足度。終わってしまうのが本当に惜しい。
娘はもちろん連れてこられないので、初めてベビーシッターを頼んだ。ホテルの紹介で、ベビーシッターを部屋に派遣してくれるサービスを利用した。どうしているか心配しながらホテルへ戻ったらしっかりだっこしてもらいながら眠っていた。だっこしないと寝ないので大変だったらしいけども娘は何事もなかったかのようにけろっとしていた。

おまけは街角で見つけた郵便ポスト。
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NYの旅はこれで終わり。夏学期を乗り切るためのリフレッシュもほぼ完了だ。

NY for Japanese Community

今回のNY旅行で密かに、しかし一番楽しみにしていたのが日本食。
ボストンは日本人が多いと思われているが、NYに比べると格段に少なく店も少ない。大体の日本食レストランは日本人以外によって運営されているし、日本風アメリカンと呼ぶべき料理が多いのでまず外で日本食は食べない。

外務省発表による2005年の海外在留邦人の統計によるとNYが世界1位で約6万人、ボストンは同29位で約5500人。軽く10倍以上の差がある。年間の日本人観光客数はNYが約40万人、ボストンは約4万人と言われているからこちらも似たようなものだ。マツザカ効果はあるだろうけど、高めの予想でも年間2万人アップだと言われているからたいしたことはない。

観光客&仕事で長くて1週間滞在する機会は何度かあった両都市だけど、生活する立場になってみるとこの差はかなり大きい。早速初日からマンハッタンに住む従兄弟に連れられてホテルの近くにあるSushidenという寿司屋へ。半年ぶりに寿司、刺身、ぶり大根、もずくなどを楽しんだ。うーん100%日本の味、しかもボストンに比べると確実に安い。翌日は沖縄料理店にも行ってしまった。あまり沖縄の素材や調味料が使われていなかったのが残念だけどこちらも美味。

料理に限らず、NYには日本人の日本人による日本人のためのサービスがあふれている。紀伊国屋に積んであったNYジャピオンという無料の情報誌にはあらゆる類のサービスが載っている。妻に至っては「NYだったら英語勉強しなかったかも」と言う始末。

そしてこの情報誌をホテルでじっくり読んで驚いたことが2つあった。

1つは10年前まだ学生だったときに一人旅をしていたときに出会った現地育ちの日本人学生が、今はマンハッタンで歯科医師として病院を経営している事実を広告から知ったこと。あのときはNYから帰った後も数年間、メールや手紙をやりとりしていたけれど自然と連絡が途絶えてしまったのだ。ちょっと歳を取った笑顔を見ながら呆然としてしまった。もっとも同じ事を繰り返すのが目に見えているので連絡は取っていない。

もう1つは、こんな店を見つけたこと。日本でもあるんだろうか・・・・要らないけど。
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NY by AMTRACK

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しばらく更新していなかったのは、休みを利用してニューヨーク(マンハッタン)へ行ってきたためだ。個人旅行の時はネットとはなるべく縁を切ることにしている。
今回は娘がいたので3泊4日の短期旅行だったが、初めての子連れ旅行は大変ながらも楽しいものだったので数回にわたって報告する予定。

さて、ボストンからニューヨークへ行くには4つほど選択肢がある。飛行機、バス、電車、自動車だ。
娘を5,6時間も幼児用カーシートにくくりつけておく訳にはいかないのでいくら安くともバス(片道$15!!)と自動車は論外だ。
飛行機は、片道$140と一番高いだけあって一番時間が短いように見える。でも実は空港と街が遠かったり手続きが煩雑だったりしてあまり時間短縮のメリットはない。しかも飛行機のトイレでおむつを替えるのは一苦労なのだ。
一方で、電車はACELAという新幹線のような特級列車でも片道$93と安い。広い身障者用トイレにおむつ替え台が付いているし、自由席なので切符を買わない娘の席も占領できてしまう(規約上は切符を持つ人に譲らなければならないのだが、その確率は非常に低い)。そしてボストンもニューヨークも駅が町中の便利なところにあるので空港に行くことを含めて考えると費用、時間、手間のどれをとっても優れている。さらには片道3時間半の間、車窓からの風景を楽しめるというおまけ付きだ。

調べてみたら意外と使えるじゃないかAMTRACK、というわけで往復は電車の旅。
新幹線より各列一席少ない2-2席の電車は、のぞみ500系より揺れて乗り心地はいまいち。そういえばJRからMITに来ている人も、航空網が発達しているので鉄道への投資が少ないようなことを言っていた。しかし、それ以外は至って快適であっという間の3時間半だった。

2007年6月 1日 (金)

Value for GPS System

20070531_1 こちらのブログでも紹介されているように、ヨーロッパが開発しているGPSシステム、Galileo計画がビジネスとして実行することを断念した模様。日本の準天頂衛星と同じ道をたどっている。

結局ずっと疑問視されていた、高精度位置決定と安定したサービスというガリレオが売りにしていた点では全システムに投資した資本を回収するだけの価値を見いだせなかった。
言い換えると、無料で1mより高い位置精度を、今後も当面の間、社会保障上問題ない地球上ほとんどの地域で提供するアメリカのGPSを捨てて、それ以上の位置精度と政情不安定な地域でのサービスを受けるためにお金を払っていいというユーザーが居なかったという至極簡単な結論だったわけだ。

もしかすると衛星電話のIridiumやGrobal Starのように、最初は事業の採算性があったのが、開発途中で地上のインフラレベルの向上や技術の発展によって既存のGPSによる位置決定精度が向上するなど、状況の変化によってニーズが無くなっていったのかもしれない。

政府にとってはアメリカに依存せずに位置決定システムが持てるわけで自在性というメリットが絶対的にあるわけで、落ち着くところに落ち着いたという感じがする。誰がGalileoの自在性をコントロールするかという問題はあるわけだが。

さて、無料のサービスがあるからと言ってビジネスチャンスが全くないというわけではない。無料で提供されているコンピュータのオペレーティングシステム、Linuxを無料/有料のソフトウェアと組み合わせてパッケージ化したものを販売して成功している企業もある。個々のソフトウェアはWebから無料でダウンロードできるし、有料ソフトウェアも個別に買った方が安かったとしても、インストールやメンテナンスを簡単にしたり、サーバーを中心とした大きなシステムを組んだりすることでユーザにお金を払ってもらう事に成功しているのだ。

性能や機能に優れているからという単純な理由だけでなく、ユーザーは何に対して価値を認めるか(Value Creation)、さらにはそれに対してどれだけお金を払い、自分たちにどれだけ回ってくれるか(Value Capture)を見極めないと成功するのは難しい。

しかし、これで結果的に政府がインフラとしてGalileoを配備してくれれば既存のGPSサービス関連企業には大きなビジネスチャンスが生まれてくることは間違いない。Galileoの事業化に失敗して一番利益を受けているのは誰かと考えるとややこしくなってくるのでこの辺で。

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