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2007年6月29日 (金)

WINDS愛称募集

20070628_1 来年打ち上げが予定されているインターネット衛星WINDS、開発も大詰めを迎えたようで昨日プレス公開されたとのニュースが聞こえてきた。それと同時に愛称の公募が始まっている。自分が考えた名前が衛星の名前になって半永久的に高度36000kmを超える距離で地球の周りを回り続けるというのも悪くないと思うので、いい名前を思いついた人は是非ともこちらのサイトから応募してほしい。

さて、この衛星の開発がスタートしたのは確か2000年頃だったと思うので、始動からサービス開始までに少なくとも7,8年要することになる。そしてその間にインターネットを中心に、通信環境は大きく変わってしまっている。これからのグローバル通信サービスとして意気揚々として始まった衛星通信サービスのIridiumやGlobal Star、Orbcommなどが地上の通信網の劇的な発展によって破綻し、アメリカの軍が支えていると言っても過言ではない。衛星放送サービスも大手が統合を余儀なくされている状況で、商用通信サービス市場はあまり順調とは言えない状況だ。

とはいえ、ビジネスではなくて国が公共サービスとして(正しくはそのための実験として)

  • 突然の災害時に(いつでも)対応できる丈夫な通信
  • 現在、通信が不便な地域に(どこでも)通じる快適な通信

を実現させるというのは決して間違った話では無いと思っている。携帯電話の人口カバー率が99%を超えたと言うけれど、商売にならないからと言ってサービス対象から切り捨てられる1%の人たちにサービスを提供することや、緊急事態のためのセイフティーネットを張ることは国の仕事として必要であると思うからだ。

それでもMITのクラスメートにこの衛星の目的を説明するときにどうにも困ることがいくつかある。

まずは、衛星ブロードバンド通信環境を実現するための「最初のステップ」と位置づけられている割にはその後どう発展させて行きたいかが報じられていないこと。5年寿命の衛星の開発に8年かかっているのだから次の衛星を今から開発しても数年のブランクが生じることになる。これまでに国の衛星で後継機と同時並行で開発された衛星は知らないので何か政治的な制約があるのかもしれないし、それを受け入れたとしても日本が具体的な戦略をどう取っていきたいのか問われても残念ながら全く答えられない。

次に、僻地でも快適な通信環境を構築する事に成功したとして、地上通信網と共に発展していったときにいつかはサービス地域や対象がバッティングする。この通信サービスがコンシューマ向けだと考えると地上網に移行していくことが自然なわけで、衛星通信サービスは一時的かつ補完的なものなのだろうかということ。もしあるとすればどこに共存点や衛星通信の発展性があるのだろうかと言うこと。

ある時点でのスナップショットではなくて長期的な観点で技術やサービスの戦略を見据える。自分たちは誰に何を提供してその実現と運用ために必要なことは何かを明確にする。そしてサービスの価値を考えるには必ず似たようなサービスを提供する他の手段と比較して考える。
Technology Strategy、 Value Creation & Capture. これは何をするにも当たり前のことだけれど簡単なことではない。だからこそSDMプログラムでは皆で繰り返し考えて学んでいる重要なことの1つだ。

写真はJAXA提供。当然ながら緑やピンクのビームが出るわけではなくて目に見えない電波が出ます。

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コメント

>510さん
コメントありがとう。
プロジェクトとしてスタートする事になったのであれば、プロジェクトはその定められた条件の中で最良の解を導くことが求められるわけです。
それ以上のことは、おっしゃるとおり、プロジェクトが声を上げることは出来ても決めていけることではないし、もしかするとJAXA外のどこか他の次元で決められるべき事かもしれませんね。

なのではっきり言ってSEやPMでは対応しきれないレベルの話です。

ただし、SEとかPMのレベルから見て何かがおかしいならばそれを論理的に、客観的に、国内外のケースを引き合いに出しながら各個人が上に向かって突きつけていく方法を持ち、行動する事は1つのやり方だと思う。

間違いなくすぐには芽が出ないだろうし、分の悪い賭けかもわからないけど残念ながら自分が将来の自分のために出来ることはそれくらいしか思いつかないのだよ。

さらに追加

「国全体の情報通信インフラビジョンを作れるような人材」ってのは、そういうビジョンを作る権限があり、かつ、実際に作ってる人、ってことになります。

そんなことをやったこともなく、かつ、権限すら与えられていないJAXAが、通信衛星をその現実の使われ方や将来発展まで視野に入れて開発しろということ自体がそもそも無茶なんですな。

自己弁護するつもりはないが、各個人の努力ではどうにもならないレベルの問題だと思う。

まったくその通りだと思う>WINDS

僕はWINDSの概念設計段階に審査会に出たりしてきたけど、すでにその時点で、上に書かれたようなことが指摘されていた。プロジェクト関係者もみんな認識していた。

しかし、「もう作ることになったんだから、とりあえず走ります。」という雰囲気でバーっと走り始めて、いちど走り始めると開発トラブルも発生するし、予算処置やら信頼性向上やらなんやで、とにかく衛星をまとめ上げることに注力せざるを得なくなる。

「地上通信網の発達や、周りの環境に臨機応変に対応して、プロジェクトの方向性を見直す。」ってなことは、現実には不可能に近い。

昔、NTTのCSをNASDAが作っていたときのように、国全体の情報通信インフラビジョンを誰かが作っていて、そちらから依頼されて衛星を作るのであれば、いまのやり方でも問題なかっただろう。

でも、情報通信インフラ整備は今や完全に民営化され、複数の企業が切磋琢磨しながら競っている時代に、そういうビジョンもなしに(もしくはビジョンを作れるような人材確保も無しに)通信衛星を作っても、うまく行くはずがない。

まだまだ、BS、CS、GMSの衛星開発受注時代から抜け出れていないってことなんでしょうな。

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