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2007年7月12日 (木)

ものづくり ~Pugh Matrix~

200705000_1pughmatrix 前回紹介したように、いくつかの設計案が出てきたときにはどうやって最も良い案を選べばよいのだろうか。
定量的に順位をつける、すなわち点数をつける方法がいくつかある。基本的にはどの手法も、評価基準を並べてそれぞれを重要度×評価点数の合計で評価すると言っていいだろう。
AHPと呼ばれる手法も有名だけど、比較的Web上の日本語情報が充実していそうなので、今回はPugh Matrix(ピュー・マトリックス)と言う手法を紹介する。英語であれば情報が充実しているので興味のある方はそちらも参考にして欲しい。

さて、Puth MatrixはStuart Pughという人が1980年代に考案した方法で実行手順は次の通りだ。

  1. 評価基準となる重要な要求やニーズを並べ出す。多くても30~40個に絞る。数値化できないものでも良いが各項目が同じ程度の重要度であればなお良い。
  2. 市場に競合製品や比較できる製品で最も重要な製品を比較対象として選び出す。市場に無ければ設計案のうちから1つ基準となるものを選ぶ。
  3. 各設計案に対して、それぞれの評価基準が比較対象と比べたときに、優れている(+)、同程度(0)、劣っている(-)の三段階で評価する。
  4. +,0,-の合計を各設計案で集計して、比較対象よりも悪いスコアのものを削除する。写真のようなマトリックスができあがることになる。このマトリックスは僕のチームが実際に授業中に作ったものだ。
  5. 残った案のうち、複数の案の要素を組み合わせることで良いスコアになると思われればそれに従って再度設計を行う。
  6. 候補案が出そろったら1~5を繰り返して絞り込んでいく

なぜどれだけ優れて(劣って)いるかを数値で表さずに+,0,-で表すのだろうか。それは人間が二つを比較して優劣をつけることには優れていても、絶対的にどれだけ優れているかを評価するのは苦手としているからだ。それに性能のように数値で示せるものでも、3倍になったら価値が単純に3倍になるとは限らない。

そして一番気をつけて欲しいことは、この手法を繰り返して使って候補を絞り込んでいくときには最終的に1つを選び出すのではなくて、その手前の3~4候補残ったところで終了させることが最適と考えられていることだ。

実際にやってみるとわかることだけれど、この手法を使ってスコアを出したときに例えば+,0,-がそれぞれ8個,2個,3個の候補と6個,6個、1個の候補ではどちらが優れているか判断できるだろうか?よしんば7個,5個,1個だったとして果たしてその+1個の違いで優劣を決められるだろうか。そもそもスコアをつける基準とした要求はそれぞれ同じ重要度だろうか?

もちろんPugh Matrixの発展型として、それぞれの要求項目に0.0~1.0の範囲で重み付けをする手法もあるけれども、その重み付けは信頼できるだろうか?
クラスメートのほとんどがこれらの問いに対してNo!と言うに至ったことからもおおかた間違いではないと思う。

それではPugh Matrixを始めとした数値評価方法は何のためにあるかというと、僕は大きく分けて3つあると考えている。

  • 劣った案を切り捨て、選択肢を大幅に絞る
  • 何を重要視して何を無視するかの考え方、それぞれの案に対する認識を目に見える形でチーム内で共有する
  • 新しい組み合わせの発見を助ける

逆に危険な使い方として考えるのは次の通り

  • 意志決定を形式的に済ませる
    • 点数はあくまで参考なので算数で最適なシステムは決まらない
    • 点数付けや重み付けが本当に正しいか評価しにくい
  • 評価選択のプロセスを完全にコントロールする
    • 厳密な論理を持たないので、逆に感情的で非論理的な想像力を刺激する
  • トレードオフ
    • 単純に向いていない

ここまで読んでくれた人なら想像が付くと思うけれど、AHPなどの他の手法も大体同じようなものだと考えられている。点数による評価結果を意志決定の理由として使うことは欧米でも珍しくないけれども、クラスメートが所属する企業で使っているところの実態を聞くと(大体は航空宇宙防衛産業だ)あくまで表向きに都合良く説明できる形式的なものに過ぎないと認識しているようだ。

その代わりに、各自の考えを数字という比べられる形で表すことで議論を加速してより良い案を導き出すと共に、最終的には意志決定者がプロジェクトをどの方向に向けるか、何を重要視して何のリスクを背負う覚悟をするか、そうやって論理的に判断するしかないのが現状のようだ。

さて、皆さんの感想はどうだろうか。

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