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2007年7月14日 (土)

System Dynamics(その1)

20070713_0 ある問題を解決しようとして取った行動が予期せぬ副作用を起こして全てを失敗させる事は珍しくない。その頻度は世の中が複雑になるにつれて増していると言えるだろう。それでもその失敗の原因は複雑なシステムの大局を見失い、一面的にしか物事を見なかった事に起因する事が少なくない。つまり、一見すると問題は細部に宿っているように見えて、一歩引いて大局的な目で見てみると全体のバランスやロジックを見失っていたためにおかしくなって一部で問題が顕在化しただけだったりするということだ。そういった場合にはいくら問題が起きた箇所を直したところで、また問題が大きくなって返ってきたり他のところに問題が起きることになる。

システムダイナミクスの狙いは、システムに含まれる現象の因果関係を明らかにしてモデル化することで、全体を俯瞰的に理解しようというものだ。そうるすことで、システムの全体構造を理解した上で意志決定ができると考えられている。もちろんモデルを組み立てた後は数値シミュレーションを実行することも可能だけれども、それにこだわらず、あくまで論理的にシステムの仕組みやダイナミクスを理解するために使える事が一番の魅力だと考えてもらっていいだろう。
なにせ起源はある企業が抱えていた、需要に対する生産体制の変更や在庫管理がうまくいかない問題を解決するために考えられたもので、MITではSloan ビジネススクールの授業として提供されている。写真にある教科書の題名もBusiness Dynamics -Systems Thinking and Modeling for a Complex World-なのだ。
そして一番驚いたのは、アメリカでは広い視野を持った人材を育てるために、The Creative Learning Exchangeという団体が設立されていて、なんと幼稚園や小学校からシステムダイナミクスを授業に取り入れているということだ。個人的にはすごく良いことだと思うので日本の教育現場でも取り入れてみてもいいんじゃないかと思う。
日本では全く知らなかった学問分野だけれど、産業への適用はともかく一定規模の研究は行われているようだ。

さて、そのシステムダイナミクスを説明する最も簡単な例の1つとして、人口の増減を考えてみよう。
最もシンプルに考えると人口が多くなれば生まれる人は増え、さらに人口は増える。逆に人口が減ると出生数も減り更に人口が減る。つまり物事の流れが強化される(Reinforcing)。
一方で、人口が増えると死ぬ人も増えて人口増加を抑える。人口が減ると死ぬ人が減って人口の減り方は穏やかになる。こちらはバランスが取られる(Balancing)。
20070713_1
これをシステムダイナミクスの基本”Causal Loop Diagram”と呼ばれるモデルで表したのが上の図だ。原因と結果は矢印で、その関係は+と-で表される。そして人口変化を加速させるループR(Reinforcing)と変化を抑えるB(Balancing)で表される。
20070713_2_1
さらにこれを”Stock & Flow Diagram”という図に変換すると上の図のようになる。人口が貯まる(Stock)のに反応して、出生数や死亡数が変化する。これは栓を抜いたバスタブにお湯を注ぐ状況を考えてもらえばいいだろう。

もちろん人口が増減する理由はそんなに単純ではない。国や地域、時代によって様々な要因が複雑に絡み合ってくる。それでも人口が増減する根本的な理由は人が生まれ、人が死ぬことだ。そこを押さえた上でその理由を順次論理的に発展させていく事が出来る。そういう意味でこのモデルからスタートすることは無意味どころか非常に大事だと思う。

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