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2007年12月28日 (金)

IridiumとGlobalStar(その4)

20071227_1 前回の最後に紹介したように、確実に、そして少しずつ衛星モバイル通信の強みを生かせるサービスと顧客が見つかり始めた。残念ながらその数と増加率は数億ドルの借入資金の利息をまかなうことさえできなかったし、あまりにも遅すぎた。

何故このようなことが起こってしまったのか。
何故サービスを始める時点で隠れた顧客を見つけ出してそこにターゲットを絞ってビジネスを展開できなかったのか。
それには大きく分けて2つの理由があった。

一つはMotorolaもQualcomも電話がメインの事業だということ。彼らは膨大な予算をかけて非常に綿密なマーケティングを世界の電話関連企業と組んで行った結果、その範囲外に目を向けることができなかった。どこの電話会社が衛星モバイル通信の需要調査の相手にパイプライン管理業者を選ぶだろうか。チリの山奥まで出かけていくだろうか。

そしてもう一つはユーザー自身が衛星モバイル通信サービスのメリットを理解しなかったこと。いや、ユーザーにメリットを理解させることができなかったこと。
人は何かに不便を感じていても、今まで全く自分たちの生活に関係なかった分野の新技術や新サービスが自分たちの問題を解決してくれるとはなかなか思いつかない。ましてや世の中にないサービスを具体的に求める事ができる人はさらに少ない。

結局のところ、衛星モバイル通信サービスはMBAのケーススタディに良くある典型的な失敗例だ。彼らはすばらしい技術や魅力的に見える新しいサービスモデルを見つけて、それから誰がどう使ってくれるか考えた。
違う言い方をすると技術売り込み(テクノロジープッシュ)型のビジネスであり、誰かの問題を解決する(カスタマープル)ためのビジネスではなかったのだ。

技術売り込み型の新しいビジネスはニーズの掘り起こしに長い時間がかかるのが一般的だ。そのためにはニッチ市場から入って、ニーズの拡大と共に少しずつビジネスの規模を広げていくのが定石と言われている。しかし衛星モバイル通信サービスを始めるには非常に大きな先行投資が必要であり、顧客の発掘も間違った方向に進められ、正しい顧客を見つけたときには既にとき遅く、しかもその伸びはあまりにも鈍かったということになる。

このIridiumのケースをリアル・オプションやソリューション空間解析などシステム最適化の理論を用いて分析した研究がこちらにあるので興味と気合いのある方はどうぞ。(もちろん英語)

最後にそこまでの気合いはなくとも興味を持たれた方には、これに似たような話が非常にお勧めな本になっているので紹介しておこう。Iridium、GlobalStarと同じようなビジネスを異なるアプローチでチャレンジして、大きな挫折と少しの成功を納めたOrbcommというベンチャー企業のスタートアップのストーリー。僕は地元の図書館で借りられたので、高いと思った方は図書館をあたってみることをお勧めします。

衛星ビジネス・ウォーズ―大を制した宇宙ベンチャー 衛星ビジネス・ウォーズ―大を制した宇宙ベンチャー

著者:ゲーリー ドルシー
販売元:日経BP社
Amazon.co.jpで詳細を確認する



(写真はIridiumのサービスエリア。常に世界のほぼ全域がカバーされていて動画で衛星の動きを追うと美しくさえある。)

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