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2009年2月 6日 (金)

バランス

場面はいよいよ日露戦争に突入している。

勧められて年末から読み始めた「坂の上の雲」は第三巻に入ったところ。本格的に面白くなってきた。

実は面白いのは日露戦争そのものではなく、その当時の日本軍首脳部が何を考えて軍備を増強し、軍人に教育を行い、そして日露戦争へ臨んだかという、人と組織が持っていた考え方と行動だ。

筆者の司馬遼太郎氏も記しているように、当時の日本軍首脳部がいかに論理的で、現実主義かつ実力主義な組織であったか、読み進めるにつれて驚きは増す一方だ。
そのような状況から一世代、約35年後の第二次世界大戦では、なぜ精神論や階級主義に染まった組織になってしまったのか、本当に理解しがたい。

明治時代には、居並ぶ列強に対する圧倒的な国力の差という現実と、強烈なコンプレックスに打ちのめされていて精神論に走る余裕なんて無い状況に有ったからかもしれない。
そして、日露戦争を勝ちに持ち込んだ人たちはその精神を次の世代に伝えることをしてこなかったツケが回っただけのことかもしれない。
もしかすると単に大企業病に陥ったと言えるのかもしれない。
それでも今の僕にはあまりに不可解だ。

もちろん、精神的に鼓舞するような行動が必要無いかと言えば全くそんなことはなく、とても重要であることは間違いない。例えば、マーチー・ルーサー・キングJr.が"I have a dream!"の代わりに"I have a datum"と言って数字や事実を羅列しても決して歴史には残らなかっただろうし、バラク・オバマ大統領が独立戦争で勝利したアメリカの精神をうたわずに、アメリカ経済の危機的状況と回復策を論理的に述べたとしたら「あきらめずに頑張ろう」という言葉にあれほど大勢の人たちが共感したとは思えない。

要は、高い士気、良い実行計画、良質なリソースがセットで必要という当たり前のことなのだろう。問題は一つの要素だけが十分に有ったときに、残りの要素が足りないことがそれでいくらでもカバーしようとすることにある。問題の原因を残したまま問題を解決しようとするのだからたいていは上手くいかない。少しは上手くいってもすぐ限界がくる。

自分の身の回りで耳にする組織やプロジェクトの話で「歯を食いしばって何とかやり遂げているプロジェクトが有るんだから、足りないとか、仕組みが悪いとかいうのはあるのかもしれないけれど、なんか愚痴に聞こえるねぇ」と言われたりしている状況からすると、少なからず大日本帝国的な状況にある組織、さらにそれに気づいていない組織も多いんじゃないかと思ったりする。

大日本帝国軍がいかに問題を抱えた組織であったかはこの本に詳しいので、興味のある人は読んでみることをお勧めします。僕には今の日本の状況がこの当時と大きく変わっているとは決して思えなかった。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

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